愛 人 −L'AMANT− (2)














呂望に与えられた部屋は、この上なく豪華だった。
旧華族の持ち物だったという館の内部は、実に瀟洒で品良くまとめられている。
呂望の部屋も、広さは合計して五十畳以上あるだろう。居間と寝室に分かれ、決して華美にはならない落ち着いた彩りの家具や装飾品は、いずれも極上品ばかりだった。

その美しい居間の真ん中にある、布張りのソファーにぽつりと呂望は腰を下ろしている。
書架には何かの全集が並べられ、オーク材のデスクの上にはパソコンも置いてあったが、何をする気にもなれない。
ただ、ぼんやりと何故こんなことになったのかを考えている。



ことの始まりは、祖父の急逝だった。



彼からの求婚を断ってから三ヵ月後、頑健だったはずの祖父が突然、心不全で倒れ、そのまま帰らぬ人となった。
一ヵ月後の親族会議で公開された遺書にあった相続人名は、呂望。
他の親族には一部の株式や不動産を譲渡するのみで、巨大な崑崙グループ会長の持つ諸権利は、すべて直系の孫娘に与えることが明記されていた。
だが、問題は呂望がまだ後見人を必要とする年齢──17歳だったことだ。
年端もゆかない少女を、誰一人として後継者として認めはしなかった。
結果的に、呂望の死んだ父の妹夫婦が後見人として立ち、実質的な権限をすべて奪い取って、呂望に残されたのは広大な邸宅のみ。
抵抗しようにも、味方はおらず、また法律さえも楯にはならなかった。



そうして、約1年が過ぎて。
無為のまま過ごしてた呂望の耳に、グループ本社の経営が傾き始めている、という噂が伝わってきた。
バブルがはじけて安くなった土地に投資したのが上手くいかなかったらしいが、呂望の元には詳しい情報は何も与えられず、何をどうすることも出来なかった。

それが、突然。

叔母の夫である叔父が訪ねてきた、というそれだけで、呂望は何か嫌なものを感じた。
叔父の野心家で目的のためには手段を選ばないところが、昔から好きではなかった。
案の定、言い出したことは。
呂望の結婚話だった。

経営が上手くいかず、頭を抱えていたところに、KG総合商事から提携の話が持ち出されたのだという。
互いに株式を持ち合い、お互い足りないところを補い合おうと。
KG総合商事は会社の歴史こそ浅いが、この不況続きの中でも毎年黒字を計上している優良企業だったから、叔父はその話に飛びついた。
だが、その話には一つ条件があったのだ。

長い間恋焦がれていた前会長の孫娘を、どうしても妻に欲しい、と。
頭を下げたのだと。

叔父は良く回る舌で語った。
さも誠実そうに、嬉しげに。
既に、その時点で話は決定されていた。
当事者の意思など無視して。

その時はまだ、戸惑いの方が先に立って、待ってくれと告げるのが精一杯だった。
面識はあるが、よく知りもしない相手と結婚など考えられない、と。
そうしたら、叔父はうなずいたのだ。
それならば、会ってみるがいい、と。

そして。
一応見合いの体裁を取り繕って、再会したその日。

彼の言葉が、すべてを打ち砕いた。



















突然。
響いたノックの音に、びくりと呂望は我に返る。
返事も待たずに入ってきたのは。
この館の主人である、美しい青年。
既に着替えたのか、ネクタイも上着もなく、シャツとスラックスのみの軽装だった。

「すみません、思っていたよりも遅くなりました」

甘い甘い声に、知らず躰が震える。

全身をこわばらせた呂望の隣り──約一人分の間隔を空けて、彼は腰を下ろす。
そうして、ゆっくりと呂望の髪に手を伸ばした。

「夕食は、あまり食が進まれなかったそうですが、どこか具合が?」
「───いいえ・・・」

悪いと答えたらどうなるのだろう、と思いながら呂望は否定する。
だが、先延ばしにしたところで結果は同じなのだ。






「僕の求婚を、あなたのお祖父様は断られた。成り上がり者は、あなたに相応しくないとね。だから、これはその意趣返しだと思っていただいて構いません」

「式は、あなたが成人されてからでいい。けれど、それまでも婚約者として僕と共に暮らしてもらいます」

「その意味が、分かりますね?」

「あなたは僕の愛人になるんです」






初めて出会った時の優しさはどこにもない口調で、微笑みながらそう告げた彼は、恐ろしさを覚えるほどに美しくて。
悟らざるをえなかった。
彼が自分を解放してくれることなどありえない。
ならば、と。
呂望は彼のまなざしから瞳を逸らさない。

ゆっくりと髪を梳く彼の指が、頬をすべり、細い首筋へと下りてゆく。
指先でうなじをやわらかく撫でられて、膝の上に重ねた呂望の両手がかすかに震えた。

「抵抗、しないんですね」
あやういほどに甘く、彼が微笑む。
「やはり、あなたは賢明な方だ」

そして。
うなじに伸びた手を背に回し、少女を抱き寄せる。
もう片方の手で顎を持ち上げられ。
呂望は目を閉じる。

やわらかな熱が唇に触れ、それだけでは足りないというように濡れた舌が渇いた唇の上を這う。
青年の意のままに唇を開き、舌の侵入を許せば。
綺麗に整った歯列を丁寧にたどり、更に奥へと忍び入って口腔を犯しながら、震えるやわらかな舌を絡め取る。
何度も口蓋に微妙な愛撫を繰り返し、誘い出した舌や唇を甘噛みする手管に翻弄されて、息苦しさと込み上げる感覚に呂望は、くぐもった声を上げた。

やがて、ようやく離れた唇から透明な雫が糸を引いて。

優しい仕草で少女の口元をぬぐいながら、青年が告げる。

「シャワーを浴びていらっしゃい」

その言葉に、呂望は深く澄んだ瞳をみはって、青年を見上げる。
だが、彼は薄く微笑んだまま表情を変えない。

小さく震えながら、ゆっくりと呂望は立ち上がった。













部屋についているバスルームは、最高級のホテル並の設備だった。
薄紅の模様が入った白い大理石を基調とし、どこまでも清潔に、快適に使用できるようになっている。
その壁面に造り付けられた、大きな鏡に白く華奢な少女の躰が映る。
ゆっくりとシャワーのコックをひねって湯を止め、呂望は鏡を振り返った。

自然光に近い照明の中、曇り止めを施された鏡面は、余すところなく細い体を映し出す。

白い肌には染み一つないが、女性としてはやや貧弱ともいえる。
思春期の少女の堅さはないが、それでもまだ開花にはまだ間がある、ほっそりとした躰をしばらく見つめた後、呂望はまなざしを伏せてバスタオルを手に取った。
全身の水滴をぬぐい、髪をタオルドライして。
タオルを置き、置いてあったバスローブに手を伸ばしかけて、動きが止まる。

そこに用意されていたのは、やわらかなタオル地のバスローブ一枚のみ。

他に肌を隠すものが何もない。

「───・・・」
息を飲んで、しばしの間、白いタオル地を見つめる。
けれど、そうしていたからといって何が変わるわけでもない。
意を決して、呂望は震える手をバスローブに伸ばす。
袖を通すと、やわらかなタオル地はあつらえたように膝丈になった。

そして、もう一度鏡を振り返る。

ひどく青ざめた、不安げな表情の少女が、鏡の中から見つめ返す。

それから、バスルームのドアを見つめて。
呂望は躰をすくませる。
下着を身につけてないことが、どうしようもないほどに心もとなさを煽った。

今すぐ悲鳴を上げて、逃げ出してしまいたいほどに怖い。

けれど。

帰る場所など、どこにもないのだ。彼が昼間に言った通り。

数度、震えながら浅い呼吸を繰り返して。
小刻みにおののいている手を、ドアノブに伸ばす。
ひんやりとした金属の感触に、息を飲んで。
唇を噛み締め。

ゆっくりと呂望はドアを開いた。














いつの間に移動してきたのか、彼は寝室のサイドテーブル前にあるソファーでくつろいでいた。
バスルームを出てきた少女に、微笑みかけて。

「こちらにいらっしゃい」

右手をさしのべる。

ためらうようにその手を見つめ、ぎこちなく呂望は青年へと歩み寄る。
目の前まで来た少女に微笑み、細い手を取って彼は立ち上がった。
そのまま、鏡台の前へといざなり、椅子に座らせる。
そして、戸惑った目をして見上げた少女に小さく笑いかけて、手早くドライヤーをセットした。

何も言わないまま、濡れた艶やかな黒髪を乾かしてゆく。

その手つきは、ひどく優しい。

数分をかけて髪を乾かし、最後にブラシで丁寧に梳いて。
青年はドライヤーのコンセントを抜いた。

そして、鏡越しに少女に微笑みかける。

「あなたに与える条件は二つだけです。それさえ守れば、後はお好きなようにすればいい。
一つは、僕から逃げようとしないこと。
もう一つは、他の男に決して近付かないこと。
守れますか?」

鏡の中で、二人の瞳が合う。

「───それを・・・」
少女の細い声が、震えながら問いかける。
「それを守れば、崑崙グループを支援してくれますか?」
ゆっくりと、背後に立つ青年を見上げて。
「社員の生活を、守ってくれますか?」

「あなたが僕に逆らいさえしなければ」

「本来あなたのものになるはずだった、崑崙グループとその従業員を何があっても守りましょう」

その言葉に。
呂望は瞳を揺らしながらも、ゆっくりとうなずく。

それを見届けて青年は微笑み、一旦、サイドボード前に戻る。
そして、赤い液体を満たしたグラスを手に、また戻ってきた。

血のように赤い液体を一口飲み。
もう一口を含んで、少女を仰のかせ、唇を重ねる。
口移しに流れ込む液体を、呂望は嚥下した。

かろうじて、年代物のボルドーだということは分かる。
独特の強い芳醇な香りが、喉を焼きながら滑り落ちてゆく。

そのまま口接けを深めながら。
青年は少女の躰を腕に抱き上げた。
























明かりを落としても、窓から零れ落ちる月光が寝台の上を照らし出す。

何度も口接けを繰り返し、緊張に張り詰めた肌を甘噛みして、花片のような所有印を刻んでゆく。
細く浮き出た鎖骨に甘く歯を立てると、細い手がきつくシーツを握りしめた。

「男性経験は・・・・・・有るかと訊くのが失礼ですね」
怯えきったように堅く目を閉じ、全身をこわばらせた少女の様子に、青年は小さく含み笑う。
そして、緩く結ばれていた腰帯を解き、少しずつバスローブの前をあばいてゆく。
口接けるたびに、白いやわらかな肌は過敏に震えた。

やがて。
月光の下に、見惚れるほどに美しい少女の裸体がさらけ出される。

どこもかしこも華奢で、腕も脚もすんなりと伸びている。
胸のふくらみはさほど大きくはないが形良く、腰はほっそりとひきしまり、そこから大腿までを、まるくやわらかな線が描いていて。
一糸まとわない姿にされたのが恥ずかしく、またこの先にある行為が怖くてたまらないのだろう。
堅く目を閉じ、ともすれば躰を隠してしまいそうになる手をシーツにしがみつくことで押しとどめて、小さく震えているのが、男の欲望を煽った。

「綺麗ですよ・・・・」
甘くささやきかけて、緊張のためか、既に堅く尖っている胸元の果実へと唇を落とす。
「───ぁっ!」
桜の蕾のような可憐な薄紅の果実を軽く吸いたて、舌先でつつく。
転がすようにして嘗め回すと、びくびくと呂望の体が跳ね上がった。
それに気をよくして、もう片方のふくらみへも手を伸ばす。
手の中におさまってしまうやわらかさを愛でるように、優しく優しく肌を撫でる。
そうしながら、堅く立ち上がっている薄紅の蕾を指の腹で転がしてやると、小さな悲鳴が哀願するような響きを帯びた。

「──随分、感じやすいみたいですね。嬉しいですよ」
含み笑い、更に愛撫を加える。
おそらく少女が感じ取っているのは、まだ明確な快感の形は取っていないだろう。
だが、生まれて初めての性感帯への刺激に、華奢な躰は過敏に反応した。

「──っは・・・ぁ・・・やぁ・・っ」

上がる嬌声を甘く聞きながら、あくまでも優しく、感じやすいふくらみをいとおしむ。
軽く先端の花芽に歯を立てると、びくんと背筋がのけぞり、綺麗な桜色が紅へと鮮やかに色付いて男を誘った。
「こうされるのは気持ちいいでしょう?」
やわらかく、撫でるように手のひらを滑らせ、小さなふくらみ全体と先端の蕾を同時に愛撫しながら、耳元にささやくと、嫌々をするように少女は首を振る。
だが、指が動くたび、手が動くたびに反応してのけぞる躰が、その仕草を裏切っていた。
「もっと気持ちよくなるんですよ」
毒のように甘い声を注ぎ込みながら、のけぞってシーツから浮いた背筋へと手を滑り込ませる。

「ぃやぁ・・・っ・・!」

すうっと背骨を腰の窪みまで撫で下ろすと、引きつった悲鳴が零れた。
その張り詰めた華奢な躰を逃さぬよう片手で抱きこみ、胸元を唇と舌と歯でやわらかく愛撫しながら、すべやかな背筋に指を這わせる。

「ぁ・・・っ、や・・・・っ・・ぁ・・んっ・・・」

腰の一番細くくびれた部分から双丘までの、性感帯の集中した窪みを繰り返し指先で触れると、耐え切れないように抱きしめた躰が震えた。
だが、楊ゼンは解放する気などなく。
更に執拗に肌に指を這わせ、すすり泣くような声を少女に上げさせる。
感じやすい箇所に愛撫を受け、更に過敏になったやわらかな肌を、羽で撫でるような繊細さで何度も触れて。
首筋から胸元までに口接けと甘噛みを繰り返しながら、片手を形のいい双丘から、すんなりと細い大腿へと下ろしてゆく。

最初に堅く閉じられていた膝は、とうに力を失っていて、ゆっくりと脚を撫で上げられても、頼りなくおののくばかりで。

初めての性感にすすり泣く唇に口接けながら、楊ゼンはそっと指先を最奥へと滑らせる。
「───!!」
呂望はびくりと躰をすくませて、反射的に膝を閉じようとしたが既に遅く、楊ゼンが細い脚の間に躰を割り込ませていて、どうにもならない。
「本当に感じやすいんですね。初めてなのに、もうこんなに濡れて・・・・」
花芯を濡らす蜜を確かめるように触れながら、ゆっくりと指先で繊細な花弁をなぞる。
そして、やわらかく震えている花弁を撫で上げるようにして、その上で眠っている真珠に触れた。
「やぁっ・・・!!」
途端に、華奢な躰がびくりと跳ね上がる。
「ここ・・・・、何か感じるのが分かるでしょう?」
まだ快感を快感として捕えることが出来ない無垢な躰を目覚めさせるように、充分に蜜で濡らした指先で、優しく真珠を撫で回すと、呂望の悲鳴が甘く透き通ってゆく。

「・・・ぁ・・やめ・・・・っ・・・」

小さな肉芽を執拗にいじりながら、指先で軽く摘み上げ、優しくもみしだいて刺激を与えてやる。
その愛撫に耐え切れず、細い脚が時折痙攣するように小さく慄え、先程よりも力なく開かれたのを見て取って、楊ゼンは蜜をあふれさせる秘処から指先を離した。
そして、呂望の大腿をぐいと押し広げ、あらわになった可憐な秘花に口接けを落とす。

「──いや・・っ!」

思いもかけぬ愛戯に、呂望は羞恥と驚愕の叫びをあげて逃げようとするが、それを許すことなく楊ゼンは、蜜に濡れた真珠を口に含んだ。
「ひぁ・・っ・・・!!」
経験のない躰は、指淫よりもやわらかな舌の愛撫に反応する。
もっとも過敏な箇所を軽く吸い立てられ、舌先でつつかれて、びくびくと少女の細腰が震えた。
真珠の下方で、無垢な花芯までもが息衝いたようにおののき、後から後から熱い蜜をあふれさせる。

「・・・っは・・ぁ、・・ぁん・・・っ」

「気持ちいいでしょう・・・?」
少女の甘い声を聞きながら、楊ゼンは綺麗に色付いた繊細な花弁を舌先でなぞる。
そして、焦らすように周辺を充分愛撫してから、花芯へと舌を這わせた。
「あ・・・ぁ・・っ」
とろとろとあふれだす甘い甘い蜜が、楊ゼンの舌先を熱く潤す。
まだ堅く閉じた花芯を軽くつつくと、わずかながらに反応して、舌先を捕えようとするようにひくついた。
その感触を確かめて、再び愛らしい真珠に愛撫を移しながら、そっと花芯に指先を触れさせる。
そして、やや強めに小さな肉芽を吸い立てながら、長い指を半ばまでゆっくりと花芯に挿し入れた。
その途端。

「──ひっ、ああぁ・・・っ!!」

高い悲鳴を上げて、呂望は躰を大きくのけぞらせる。
細い腰ががくがくと震えながら、異物を押し出そうとするかのように楊ゼンの指をきつく締めつけた。
「・・・・っ・・・ぁ・・・」
だが、楊ゼンは花芯に含ませた指はそのままに、乱れた少女の髪を優しく撫でる。
その感覚に、呂望は浅く喘ぎながらぼんやりと瞳を開いた。
泣き濡れて月明かりにきらめく瞳の色を見つめながら、楊ゼンはささやく。

「今のが、達くという感覚ですよ」
低い声が、甘く夜の中に響く。
「気持ちよかったでしょう?」

毒のある言葉の意味を理解したのか、初めての感覚に呆然としていた瞳が、怯えとも羞恥ともつかない色をにじませる。
それを見つめて、楊ゼンはあでやかに微笑した。

「もっとですよ。本当の快楽はこんなものじゃありません」

「──っあ・・・!」
そして、身をすくませた少女の花芯に挿し入れたままだった指を、ゆっくりと奥へ進める。
何も知らない柔襞は、快楽の余韻にひくつきながら締め付けてくるが、十分過ぎるほどに潤っているため、苦痛は生じなかった。
「・・・ぁ・・・いゃっ・・・」
繊細なそこを傷つけないように、ゆっくりと指を動かしながら、楊ゼンは細い首筋に口接けて赤い跡を残す。
「まだ分からないでしょうけど、慣れてくると、ここをこうされるのがものすごく悦くなるんですよ」
ささやきながら、胸のふくらみに手を滑らせると、きゅっと花芯が反応して締まる。
「あなたは覚えが早そうですけどね。じっくり時間をかけて教えてあげますから・・・」
含み笑い、体勢をずらして、楊ゼンは再び秘花に顔を伏せた。






「ひぁ・・・っ、・・ぁ・・・やぁ・・っん・・・」

過敏な肉芽を執拗に舌先で嬲られて、甘くすすり泣きながら呂望は躰をよじる。
まるで先をねだるように細腰が震えるのに応えるように、楊ゼンは花芯を犯す指を二本に増やす。
「ん・・っ・・!」
既に花芯はやわらかく蕩け始めていたが、それでも押し開かれる感覚に小さく苦痛の声が上がった。
それを、真珠を愛撫することで宥めながら、ゆっくりと奥へ指を進める。
そのまましばらく動かさずにいれば、柔襞が異物に馴染んで息衝き始めて。

「上手ですよ。あなたは本当に物覚えがいい」

毒のある揶揄をささやきながら、少しずつ指を動かしてやると、細い躰が反応して震えた。
快楽の受け入れ方を知らない柔襞は、あやうい弱々しさでおののきながらも、性急さのない丁寧な愛撫にゆっくり開かれてゆく。
更に同じ手順で、もう一本、指を増やして。
先程よりも強い苦痛がやわらぐのを、楊ゼンは根気良く待つ。

「・・・・っ・・ぁ・・・」

ほどなく呂望の表情からは痛みに耐える色が薄らいだが、しかし、やわらかな秘肉は、ひきつったようにきつく三本の指を締め付けて、動かせるほどの余裕はない。
だから、楊ゼンは無理に抜き差しすることはせず、優しく胸元を愛撫しながら、ごく小さく指先だけを動かして柔襞を刺激してやる。
すると、朧気ながら快感らしきものを感じ取れるようになったのか、花芯はおののきながら新たな蜜をあふれさせた。
しばらくゆるやかな愛撫を続けてから、もう何をされているのかも分からないまま、細く喘ぎながらすすり泣く呂望を見つめて、楊ゼンはゆっくりと指を抜く。

しどけなく開かれた脚の奥で、苛まれるものを失った可憐な花芯は、虚ろに蜜をあふれさせたままひくついていて。

その淫らさに、楊ゼンの目に何とも言いがたい光が浮かぶ。
そして、手早く服を脱ぎ捨てて、青年は少女の華奢な躰に覆い被さった。





「──あなたは僕のものだ」





低くささやき。
熱く猛っている己を、花芯に押し当てる。

「───あ・・・!」

腰に力を込めると、呂望が泣き濡れた瞳を大きく見開いた。

「い・・・や・・・!!」

指よりも遥かに質量を持つものが、繊細な内部にねじ込まれる苦痛に、華奢な躰がのけぞり、怯えを浮かべたまなざしを宙にさまよわせる少女の瞳に涙がにじむ。
だが、もともと男の欲望を受け入れられるようにできているそこは、充分に潤っており、ゆっくりと、しかしスムーズに楊ゼンの熱を飲み込んでゆく。

「・・・・ぁ・・・・い・・っ、・・・・んっ・・」

焦点を失った瞳から涙を零す呂望を見つめたまま、時間をかけて大部分を収め、そして一つ息をついた。

初めて男の欲望を受け入れた少女の柔襞は、痙攣するようにひくひくとおののきながら、異物を拒絶するようにきつく締めつける。
そのあやうい、甘美な感覚に楊ゼンは酔った。

だが、今すぐにでも華奢な躰を苛みたい欲望を抑えて、艶やかな呂望の髪をそっとかき上げる。
すすり泣くように震えながら見上げる瞳を見つめ、甘くささやいた。

「今、僕とあなたが一つになっているのが分かりますか・・・?」

その言葉に、かすかに眉がひそめられ、否とも応ともとれる曖昧さで細い顎がわずかに動く。
最初の衝撃はやわらいできたのか、少しだけ浅い呼吸は落ち着いてきていて。
ただ、長い睫毛がしっとりと濡れて重たげな、怯えた大きな瞳が喘ぐようにまばたきを繰り返す。

「余計なことは何も考えなくていいんです。あなたはこうして、僕を悦ばせることだけを考えればいい」

ささやいて唇を重ね、甘い口腔を深く犯す。
そうしながら、胸のやわらかなふくらみに手を伸ばすと、華奢な躰がびくりと震えて、咥え込まされた楊ゼンの熱を締めつけた。

それを合図のように、ゆっくりと楊ゼンは腰を揺らす。

「い・・やぁ・・・っ!」
繊細な柔襞に己の熱を馴染ませ、覚えこませるように小刻みに動かしながら、 鮮やかに色付いた胸元の小さな果実に口接ける。
なめらかな肌も、やわらかな胸も、動くたびにきつくおののきながら締めつける秘花も、何もかもが幻のように甘くて。
逃さぬように、楊ゼンは執拗に華奢な躰を愛撫した。

「・・ひぁ・・・っ・・、・・ぁあん・・・っ」

白い肌のいたるところに紅い跡を刻み、やわらかな胸を手のひらに収めて優しく揉み上げながら、つんとしこった先端を転がして刺激する。
同時に、秘花を犯す律動も少しずつ激しさを増してゆく。
その快楽と苦痛が同時に与えられる感覚に、呂望は細く喘ぎながら泣きじゃくった。
だが、花芯は未知の感覚におののきながらも、歓喜するようにとめどもなく蜜をあふれさせて。
「ああ、いいですよ、すごく締めつけてくる・・・」
吐息交じりの声でささやきながら、楊ゼンは、経験のない相手に対して律動が深くなりすぎないように加減しつつ、少女の躰を貪る。

「・・っあ・・・いや・・っ・・・」

限界まで押し広げられた柔襞は、ひきつったように異物を拒んできつく締め付ける。
そんな処女ならではのあやうい拒絶を強引に拓くのは、男の欲望をたまらなくそそった。
だが、少女が感じているのが苦痛だけではない証拠に、深く繋がりあった箇処を潤す熱い蜜は尽きることなく、抜き差しに合わせてぐちゅ・・ちゅぷ・・と、無垢な秘花は淫猥な水音を立てた。

「・・・ぁん・・っ、もぅ・・ゃあ・・・っ」

やがて、呂望の泣き声が透き通って甘さを増してきて。
硬さを残していた秘肉がやわらかく蕩けだし、楊ゼンの欲望を熱くくるみ込む。
律動に合わせてあふれだした甘い蜜は、とろとろと滴り落ちてシーツまでもをしとどに濡らした。
その変化を、楊ゼンは敏感に感じ取る。
「もう気持ちよくなってきたんですね。本当にあなたは物覚えが早い・・・」
含み笑いながら、かたく尖った胸元の果実に口接け、同時に秘処の真珠にも指先を触れる。

「ぁ・・ひぁ・・・っ・・やあっ・・・!」

過敏な三ヶ所を同時に責められて、初めて快楽を知った躰にはきつすぎる淫戯に、呂望は悲鳴を上げて躰をのけぞらせた。
だが、少女の苦悶に構わず、きつい締めつけを与える柔襞を熱塊で擦り立てながら、舌先で胸の果実を、指先で真珠を執拗に転がす。
細い悲鳴を上げて悶え泣く少女の秘花が、びくびくと痙攣し始めて。

「・・・ゃあああぁぁ──っっ!!」

びくんと一際大きく躰を跳ねさせて、背筋がのけぞる。
ぴんと張り詰めた躰は、痙攣を起こしたように慄え、秘処に突き立てられた楔を喰い締めた。
その絞り上げられるような痛いほどの締めつけを愉しむように数度腰を打ちつけてから、楊ゼンも堪えていた欲望を解放する。
「───いやぁ・・っ!」
熱いほとばしりをひくひくとおののいている最奥に叩きつけられて、少女が細い悲鳴を上げた。

咥え込まされた楔をあまりにもきつく締めつけすぎてしまって、かえって苦痛を生じているのだろう。喘ぎながら、呂望はかすかに眉をしかめる。
だが、それに気付いても楊ゼンは繋がりを解かなかった。
躰を深く溶け合わせたまま、快楽の余韻におののいている少女の乱れた黒髪をかき上げて。
喘ぐ唇に深く口接ける。

「あなたは僕のものだ」

細くすすり泣いている少女を抱きしめてささやいた、低い呟きは、夜の中に形もなく溶けて消えた。




























「───ん・・・」
ゆっくりと呂望は瞳を開ける。
遮光カーテンでさえぎられていても、室内は薄明るく、既に日は高くなっているようだった。
やわらかな寝具は心地好かったが、身体がひどくだるくて、わずかな身動きをすることも辛い。
それでも、ゆっくり身を起こそうと動いて。
呂望は、ぎくりとなる。

身体の奥から、何かが溢れ出し、流れてゆく感覚。

昨夜と同じく、一糸まとわない全裸のまま。
あまりにも生々しい夜の名残に、呂望は小さく震える。

わずかに目線を落とせば、肌の上には幾つもの紅い痕が刻まれている。
全身に残る気だるさと鈍い痛み。
これから毎晩、繰り返されるであろう現実。
それをどう受け止めればいいのか分からず、唇を噛み締めた時。

不意に、ノックもなく寝室のドアが開いた。

「ああ、目が覚めましたか」

その声と姿に、呂望は反射的に毛布で肌を隠した。
だが、唇を噛んだままうつむいた少女に構わず、青年はベッドに歩み寄り、サイドテーブルに白い小さな紙袋を置いた。
何かと視線を向けた呂望は、そこに書かれた文字に息を飲む。

「僕は、あなたに子供を生んでもらっても構わないんですけどね。あなたはお嫌でしょうから」

「避妊をする気はありませんから、僕の子供を生みたくなければ自衛して下さい」

淡々とそう言い、楊ゼンは片手を伸ばす。
髪に長く形のいい指が触れた途端、呂望は楊ゼンの方を見ないまま、びくりと身体をすくませた。
「今夜は何もしませんから。今日は一日、ゆっくり休んで下さい」
ひどく優しい口調と声でそうささやいて。
楊ゼンはうつむいた呂望の額に口接ける。
「それじゃ、僕は仕事があるので」

短く告げて立ち去ってゆく足音を、毛布を見つめたまま聞いて。
ドアが閉まる音が響いた後、呂望は青ざめた顔をゆっくりとサイドテーブルの上に向ける。

小さな紙袋に書かれているのは、どこかの病院名と経口避妊薬の名称。

それを見つめる呂望の顔が、やりきれなさに歪む。
「どうして・・・・・・」
途切れそうな声で呟く白い頬を、涙が一筋伝い落ちる。

──躰中に残る、彼の熱の名残。

言葉に出来ない哀しさに、呂望は声も出さないまま泣き崩れた。














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