NOISE×MAZE 08:怒ってるんだから、宥めてみせて
「何で俺がこんなとこまで……」
ぶつぶつと呟きながら、臨也はいつものはずむような足取りは程遠い、いかにも嫌々ながらといった気の進まなげな歩調を停めた。
靴裏で、アスファルト上の細かな砂利が小さな音を立てる。
そうして見上げたのは、築二十年近い三階建ての小さなアパートだった。
一応南向きではあるが、細い路地を挟んで正面にビルがあるため、日当たりはよいとは決して言えない。一応、風呂トイレ付きで、家賃は四万円ちょっとといったところか。池袋なら破格の部類に入る物件である。
シズちゃんの安月給じゃあこれが精一杯だよね、と臨也は心の中で憎まれ口を叩きながら鉄筋コンクリート製の建物に近付き、郵便受けを確かめた。
静雄の部屋は205号室。訪問するのはこれが初めてであるが、二階の一番端であることは、彼が二年前、ここに引っ越した時からチェックしてある。
運良くと言うべきか、十五個並んだすべての郵便受けから安っぽい紙に印刷されたピンクちらしが覗いていたから、臨也はつまらなさそうな顔でそれらを全て引き抜き、205号室の郵便受けにまとめて突っ込んだ。安過ぎる嫌がらせだが、訪問した以上、これくらいはしてやらないと折原臨也の名前が泣く。
瞬間接着剤があれば、ついでに郵便受けの扉が開かないようくっつけてやったのに──どうせ静雄は、その怪力で気付きもせずに開けてしまうのだろうが──と思いながら、臨也は傍らの階段を昇り始めた。
一階分の階段を昇り終えてしまうのは直ぐだ。短い廊下を歩めば、もうそこは目的の部屋の前である。
物言わぬドアを睨みつけ、溜息を一つついた後、臨也は呼び鈴を押した。
「──どちら様ですか」
待つこと十秒、内側から低い声が返ってきた。
静雄の声と同じだが、彼ではない。彼は今頃、池袋の街のどこかで薄汚い男たちからツケを取り立てている最中だ。
ああムカつく、と思いながら臨也は応える。
「俺。サイケは居る?」
「あ、はい。すぐ開けます」
言葉と同時に、内鍵を開く金属音が聞こえ、ドアが開かれた。
「どうぞ」
微笑未満の穏やかな表情で臨也を迎えたのは、津軽である。正面から向かい合うと、目線は臨也とほぼ同じ。敵意なく真っ直ぐ見つめてくる明るい茶の瞳から目を逸らして、臨也は奥を窺うようにまなざしを向けた。
「サイケは?」
「奥に居ます。──どうぞ」
「……上がっていいの?」
「上げるなとは、静雄には言われてません」
「──そう」
それなら、と臨也は靴を脱いだ。
男所帯であるから、もっと埃っぽいものだと想像していたのに狭い上がり口は勿論のこと、短い廊下にも埃は溜まっていない。
意外だなと思いながら、申し訳程度の小さなキッチンを抜けて、奥の部屋に足を踏み入れる。
その部屋もすっきりと片付いていた。
片付いているというより、物が無いという方が正しいだろう。三組の布団はきちんとたたまれて隅に積み上げられ、小さなコタツテーブルの上にもテレビのリモコンと、ピンクとネイビーの二つの携帯電話が置いてあるだけだ。そして、コンセントの傍の床上には、ドライヤーと携帯電話の充電器。積まれた数冊の芸能雑誌──勿論表紙は、羽島幽平である。
成人男子が社会人らしく身なりを整えて生きてゆくための最低限と、離れて暮らす家族に対する愛情のわずかな発露。それだけしかない部屋だった。
「あれ、臨也。来たの?」
その小さな部屋の中で、昼ドラを見ていたサイケが屈託なく振り返って臨也を見上げる。
「来たよ」
「ふぅん。──別に無理しなくて良かったのに」
「……はあ?」
思わず臨也は眉をひそめる。
だが、サイケは構うことなく笑顔のまま言った。
「だって臨也は静ちゃんのこと嫌いなんでしょ? だったら、無理してここに来る必要ないじゃない。電話とかメールだけでも俺は十分だよ?」
臨也のことを気遣ったような、何気ない言葉。
だが、そこに含まれている毒に気づかないほど臨也は鈍くはなかった。ましてや、サイケは自分のクローンである。自分と同じ遺伝子を持った人間の紡ぐ嫌味が判らないはずがない。
「──サイケ」
「昨日はねー、津軽とシズちゃんと一緒に、お布団並べて眠ったんだよ。俺が真ん中で、三人で手を繋いでねー。すっごく嬉しかった」
声を低めて名を呼んだ臨也の機嫌が降下したことに気付いているだろうに、サイケはニコニコと笑うことをやめない。
「このお部屋は臨也のおうちと違って、狭いからいいよね。テレビを見てる時とかでも、ちょっと手を伸ばしたら津軽にもシズちゃんにも触れるんだよ。あ、朝御飯はシズちゃんと一緒に作ったの。お味噌汁、美味しかったよ。お昼御飯は、さっき津軽と一緒にチャーハンとスープ作ったんだ。津軽もお料理、上手なんだよ。シズちゃんが教えてくれたんだって」
「サイケ」
「シズちゃん優しいし、津軽大好きだし、俺、ここに居るのすっごく楽しいよ。でも、臨也も楽しいでしょ。もうシズちゃんは、臨也のおうちには行かないんだから、」
「サイケ、」
「サイケ、もう止めろ」
延々と続きそうなサイケの言葉を遮ったのは、臨也ではなく津軽の低い声だった。
驚いて目を瞠る臨也の前で、津軽は床に片膝をついてサイケと視線を合わせる。その横顔は、臨也の目から見てもひどく真摯で真面目だった。
「なんで?」
「これ以上言ったら、後から泣くのはお前だからだ」
「っ、泣かないよ! なんで俺が泣くの!?」
「お前は臨也のことを好きだから。どんなに怒っていても、好きな人に酷いことを言ったら駄目だ」
「臨也のことなんか好きじゃないもん!!」
サイケは叫んだ。
憤りのためか羞恥のためか、頬を紅潮させて津軽を睨み上げる。
そして、そのままの表情で臨也を見た。
「臨也なんか嫌いだもん! シズちゃんあんなに優しいのに、シズちゃんのこと嫌いっていう臨也なんて、大嫌い!!」
絶対におうちになんか帰らないんだから!、と泣く寸前なのをこらえている表情でサイケは言い募る。
「津軽も何で怒んないの!? 津軽はシズちゃんのクローンでしょ!? シズちゃんのこと悪く言われて、どうして悔しくないの!?」
「──俺は別に……」
突然、怒りの矛先を向けられて、津軽は困惑しつつ言葉を探す。
それを今度は臨也が遮った。
「もういいよ、津軽」
苦い溜息混じりに言葉を吐き出す。
「サイケの言い分は分かった。──別に今日は、サイケを連れ戻そうと思って来たわけじゃないけど、これ以上話をするのは無理そうだしね。今日のところは帰るよ」
「───…」
涙目のむくれた顔でそっぽを向くサイケと、表情を殺した臨也の顔とを交互に見やった後、津軽は小さくうなずく。
そして、サイケの肩を宥めるようにそっと叩いてから、立ち上がった。
送り出してくれるつもりなのだろうとその行動から読み取って、臨也は踵を返し、狭い室内を玄関へと向かう。案の定、津軽は直ぐ後を追ってきた。
「──すみません。俺、言葉の使い方が上手くなくて」
声を低め、心から申し訳なさそうに告げられた言葉を、臨也は靴を履きながら聞く。
そして、上体を真っ直ぐに伸ばしてから、改めて津軽を見つめた。
平和島静雄と、瓜二つの容貌。
けれど、津軽は静雄ではない。
人間関係に不器用なところ、真っ直ぐなところ。性格も似ているところは幾つもあるが、決して彼ではない。
だからだろう。少しだけ、臨也は彼と話をしてみたくなった。
直ぐ後ろにあった玄関のドアに背を預け、腕を軽く組んで口を開く。
「君はさぁ、どうなわけ?」
「……?」
「俺のこと。どうせシズちゃんから色々聞かされてるんじゃないの?」
少しだけ意地悪く、口の端を歪めながら問いかけると、津軽は困ったようにまばたきし、それでも臨也から目線は逸らさなかった。
「──静雄は、あんまりそういう話を俺にしません。色々あったんだとは言いますけど……。臨也が一緒に暮らすのを嫌がるのは当然だとも、昨日、俺に言いました」
「ふぅん。シズちゃんにしては随分と控えめな言い草だね。──それで、君の意見は?」
この件に関して自分の意見を言ってないのは君だけだよ、と揶揄するように言うと、津軽は初めてまなざしを伏せる。
その静かな表情は、戸惑いや羞恥というよりも、単に感情を置き換える言葉を探しているようで。
そして数秒の後、言葉が見つかったのか、津軽は顔を上げてもう一度臨也を真っ直ぐに見つめた。
「俺は、皆が良ければ、それでいいです」
「皆って?」
「静雄とサイケと、臨也と。皆が一番いいのが、俺はいい」
「……ふぅん」
津軽の答えを、ずるいとは臨也は咎めなかった。
おそらくフラット状態の静雄に尋ねても、同じように答える。そんな気がしたからだ。
普段なら、臨也はそんな曖昧さに付け込んで、いずれかの方向に誘導する。君の本心はこちらにあるのではないのかと、真実を知り尽くした賢者を装い、さりげなく誘いかけながら。
だが、静雄はそれに決して引っかからないし、津軽もおそらく、引っかかりはしない。
真っ直ぐに臨也を見つめてくる目は、時折出会う、そういう種類の人間の目だった。
「じゃあさ、君の正直な感想は、どうなの。シズちゃんと二人暮らしの次は、うちのマンションに通う日々、挙句は、サイケが転がり込んできた。それぞれに思うところが無いとは思えないんだけどね?」
分かりやすい言葉を選んで問いかけると、津軽は小さく首をかしげる。
「──俺は一人で居るのは、そんなに苦にならないんです。ラボに居た頃も、一人で居る時間の方がずっと長かったですから。でも、サイケが傍に居れば嬉しいし、静雄が傍に居てくれるのも嬉しい。食事する時も、一人より二人、二人より三人、三人より四人の方が……楽しいし美味しい」
「……成程」
至極正直な言葉に、臨也は小さく口元に笑みを刻む。
「つまり、君も同居したい派なわけだ」
「──そう、なるかもしれません」
「かも、じゃなくて、まさにその通り、だろ」
嘲(あざけ)るように言うと、津軽は困ったように眉を寄せる。
ネブラの実験体だった以上、悪意ある言葉に全く接したことがないとは考えにくかったが、対処の仕方は学ばなかったのだろう。
オリジナルのように反発することはおろか、受け流すこともできずに困惑するしか術を知らない。そういう善良な魂が、真っ直ぐな瞳から透けて見えた。
「まあいいよ、とりあえず全員の意見は分かった。サイケの意見とシズちゃんの意見はムカつくけどね。結論が俺次第というのは正直、悪い気分じゃない」
そう、考えようによっては、全ては臨也次第なのである。
自分が状況をコントロールできる。そう考えれば、現状はさほど悪いものではないような気もしてくる。──あくまでもそれは錯覚で、酷く面白くない状況に変わりはないのだと、冷静な部分できちんと分かってはいたのだが。
「それじゃあ、俺は帰るよ。どうするかは、もう少し考えてから決めるから、それまでサイケをよろしく」
「──はい」
うなずいた津軽に片手を軽く上げて、外に出ようとしたその時。
「臨也」
静雄の声に良く似た津軽の声が、臨也を呼んだ。
「──何?」
肩越しに振り返ると、津軽は相変わらず真っ直ぐに臨也を見つめていた。
「静雄は、あれできちんと考えてます。静雄なりにですけど」
「……たとえば何を?」
「サイケをここに連れてきたこととか、一緒に暮らすこととか。静雄なりに考えて、OKを出したから行動したんです。納得していなかったら静雄は動きません。……そのことは臨也の方が知ってるんじゃないんですか?」
津軽の問いかけは決して揶揄ではなく、純粋な問いかけだった。ただし、確信を含んでいるように聞こえることが、臨也の神経を逆撫でする。
「そうだね」
だが、そのかすかな苛立ちを綺麗に隠して、臨也はいつもの皮肉めいた笑みを口元に浮かべた。
「シズちゃんは、あの通り人間のセオリーが通らない化け物だし、行動は動物じみてる。納得云々以前に、本能的にやりたいと思ったことしかしない。それは俺が一番良く知ってる」
でもね、と臨也は続ける。
「シズちゃんがどれくらい単細胞なのかも、俺が世界で一番良く知ってるんだ。シズちゃんの中にはYESとNOしかない。ALL or NOTHINGだ。どんなことだって、「まあいいか」とか「そんなもんか」とか言って、受け入れるか拒絶するかのどっちかなんだよ。中間がない。──対して、俺は人間だ。化け物でも動物でもない。あれやこれやの可能性を考えながら、もっと色々な答えを出せるんだよ」
「───…」
津軽の目は、真っ直ぐに臨也を見つめる。
そこには静雄のような嫌悪がない代わりに、臨也の信者たちが向けるような信頼感もない。ただひたすらに真っ直ぐなだけだ。
そのことに初めて、臨也は苛立ちを感じた。
津軽のことは嫌いではない。だが、サイケほどには愛せないし、かといって駒として利用する気にもならない。
どうにも半端だ。
その半端なことが、初めて気に障った。──この場を過ぎてしまえば忘れてしまえるほどの、些細な感情ではあったけれど。
「──俺の結論は近いうちに出すよ。シズちゃんに言っておいて、首を洗って待ってろってさ」
じゃあね、と今度こそ臨也はドアを開けて外に出る。
そして、埃っぽい大都会の空気を胸いっぱいに吸い込んでから、臨也は軽快な足取りで廊下を通り抜け、階段を下りた。
「シズちゃんが物を考えてるって言ったって、たかが知れてるっての。津軽も一体何を毒されてるんだか」
来た時とは打って変わったペースで足早に歩きながら、臨也は苦々しく呟いた。
「どれもこれも全部、シズちゃんのせいだよね。空が青いのもポストが赤いのも電信柱が高いのも、俺の気分が悪いのもぜーんぶシズちゃんのせいだ。もういっそ死んじゃえばいいのに」
森羅万象全てを静雄のせいにして、存在を呪ってみる。
だが一向に、気分は収まらない。
「大体さあ、シズちゃんの脳味噌なんて二進法じゃん。0と1しかなくって、8ビットの情報を処理するのに数時間かかるくせに、一体何を考えようっていうんだよ。もし計算の答えが出せたとしても、時代遅れもいいところだろ。大人しくジュラ紀に帰れっての」
シズちゃんがEDSACなら俺は最新最速のスパコンだよね、0からFまでを華麗に駆使して答えを出せる俺を崇めろ敬えひれ伏せ、と静雄が聞いたら激怒して標識で殴りかかられること必須の罵詈雑言を並べ立てながら、臨也は道端の道路標識を睨み付ける。
「なのに、サイケも津軽も、シズちゃんシズちゃんって……あんな単細胞な化け物のどこがいいんだか」
先程、静雄のアパートで交わした最後の津軽との会話も多少気に障ったが、それ以上に、よりによって、シズちゃんが好きだから臨也が嫌い、と自分のクローンに言われたことは、臨也の自尊心に甚(いた)く響いていた。
あの場でキレなかったのは、ひとえに津軽が居たからだと言っていい。第三者の存在が無ければ、遠慮なくサイケに言い返していただろう。実際、津軽が割って入ってくるのがもう少し遅かったら、昨日の口論の続きが始まっていたかもしれない。
サイケが可愛いのは本心だが、そこに静雄が絡んでくると、途端に臨也もむきになってしまって感情のコントロールが上手くいかなくなる。
サイケが臨也に同調して静雄のことを嫌うなら、可愛さ百倍になっただろうに、現実はその逆なのだから、腹が立つことこの上なかった。
だが、冷静に考えてみれば、今の状況でサイケがすんなりと臨也の元に戻ってくる可能性はかなり低いのである。
一度受けた恨みは晴らさずには置かないし、一度興味を持った対象には自分が充足するまで纏わりつく。そんな臨也の粘着質な気質を、サイケはきっちり受け継いでいる。
一旦、目標を『四人で一緒に暮らす』ことに据えた以上、それが叶うか、それを遥かに上回る何かが起こらない限り、サイケはあのボロアパートを出ようとはしないに違いない。
かといって、力ずくで無理に連れ戻すような真似をすれば、サイケは本当に怒り狂うだろう。幼児性が強いだけに、その辺りの感情の抑えが利かないことは容易に想像がついた。
臨也にしてみれば、これまで通りに、静雄と津軽が通ってくるのが一番都合がいいのだが、サイケはそれでは足りないと言い張るし、他の二名も積極的ではないにせよ、サイケに同調している。
あとは臨也が折れてしまえば、話は簡単に片が付くのだが、臨也としてはそれをしたくない。
理由としては、平和島静雄などと一緒に暮らせるものか、という感情的な部分が大きいが、セキュリティという現実的な問題もあった。
臨也にはとかく敵が多いし、自宅兼事務所のマンションの所在地も知られてしまっている。そして、身を守る術を持たないサイケは、臨也にとって間違いなく弱みだ。
せめて、津軽が静雄と同じ怪力を備えていれば良かったのだが、あいにく、津軽は並よりは身体能力が高い程度の普通の青年だったから、護衛という意味では何の役にも立たない。むしろ、サイケと同じく、静雄にとってのただの弱みである。
そもそも、このセキュリティの問題がなければ、臨也はとうに津軽を引き取っていたのだ。そして静雄が日に一度、津軽の顔を見に通ってくる。その方が、ありとあらゆる意味で簡単だった。
しかし、安全面からそれができなかったことは、いつかの会話で静雄も分かっているはずなのに、と臨也は歯軋りしながら考える。
「シズちゃんだって俺に負けず劣らず敵が多いんだからさ。いつまでもサイケをあのボロアパートには置いておけないし、かといって、うちだって絶対に安全ってわけじゃない。まあ、それを言い出したら、絶対に安全な場所なんてないんだけどさ」
サイケが来て以来、臨也は事務所内で仕事をすることが多かったが、それは単なる偶然で、依頼内容によっては遠隔地に数日かけて出張することもある。
秘書の波江も馬鹿ではないから、うさんくさい人間を臨也の留守中に通すことはないが、いつかの岸谷森厳訪問時の例で、我が身や弟を脅されたら、あっさりと保身に走ることは分かっている。
そこまで考えて臨也は、やはりうちのマンションも駄目だ、と結論を出した。
どういう形にせよ、あの二人を置いておくには、もっと安全な城が要る。
まだ誰にも知られておらず、ハード面でのセキュリティは万全な城。
「──クソっ」
不本意な結論に舌打ちしつつ、臨也は駅に向かっていた足を別方向に向ける。
静雄が本能で1という解を選んだように、答えは0でなくFだと頭では分かり切っていても、その間の1からEまでの数値をこねくり回さずにはいられない。そんな自分の性質に気付いていても、問題ないと気付かないふりをするのは得意だった。
to be contineud...
十六進法の基礎が二進法にあることを忘れてる臨也。
EDSACは世界最初のデジタルコンピューター。(1949年製作)
臨也ぼっち作戦、そろそろ終息。
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