「ぁ、や…っ…そこ、弱いって…知って…るくせに……っ」
 綱吉は部分的にひどくくすぐったがりで、特に脇腹や背筋のくぼみへの愛撫が度を過ぎると、時折こんな風に文句をつけてくる。
 が、それも結局のところは、感じすぎてたまらないからだということは分かっていたから、獄寺もあまり気にしてはいない。
 少なくとも、とろとろに溶け合ったセックスの後で、弱点への愛撫について文句を言われたことは一度もなかったから、今も遠慮せずに、産毛が小さく鳥肌を立てているそこへゆっくりと手のひらを這わせた。
「あっ、ぅあ…あ……やぁ…っ…!」
 それだけで達してしまったかと錯覚するほどに、綱吉は身をこわばらせ、激しく身体を震わせる。
「も……馬鹿っ…!」
 すすり泣くような声を上げながらも、まだ罵倒する元気があるのなら大丈夫かなと測りつつ、獄寺はゆっくりと手のひらをしなやかな大腿へと下ろそうとする。
 が、その手は、綱吉の動きによって遮られた。
「ぅわっ!」
 不意打ちで衣服越しに中心の熱を手のひらで抑えられて、反撃を予想していなかった獄寺は思わず驚きの声を上げる。
 慌てて目線を上げて見れば、綱吉は目じりに涙を浮かべ、息も絶え絶えという風情ながらも、そのまなざしは拗ねたような強い輝きを滲ませていた。
 というよりも、実際に肉体的には限界で、気力だけで反撃に出たという表現の方が正しいだろう。
「沢田、さん」
「名前!」
 こういう時ぐらい下の名前だけで呼べと強要しつつ、綱吉は震えるような喘ぎを零しながらも、ゆっくりと手指を動かして獄寺の下衣を引き下ろし、直に熱に触れ始める。
 その手自体も持ち主の限界を示すようにかすかに震え、力は殆ど入っていなかったから、引き離すのは簡単だったが、そうするには心地良すぎたし、また獄寺は綱吉を愛しすぎていた。
「…っ、綱吉…さん……」
 綱吉が自由にしやすいように少しだけ体の位置をずらし、細い体に体重をかけないよう肘で身体を支えて覆い被さるように、そっと唇を重ねる。
 キスの間も、獄寺の最も弱い部分を知り尽くしたやわらかな愛撫は止まず、爪の表面でゆっくりと下から上まで裏筋をなぞり上げられて、獄寺は思わず小さな呻きを零した。
「気持ち、いい……?」
 不意にそんな風に問われて、まなざしを上げると、こちらを見つめていたらしい綱吉と目が合う。
 熱に浮かされたような瞳には、もう先程の拗ねたような光はなく、ひたすらに獄寺を想う色だけが滲んでいる。その色を見た途端、獄寺は微笑んでいた。
「はい。溶けちまいそうなくらい、気持ちいいです」
「……うん」
 獄寺の返答に、綱吉も微笑む。そして、今度はどちらからともなく唇を重ねた。
 もう一度深くキスしてから、獄寺は、ちょっとだけ待って下さい、と綱吉の手をそっと自分から引き離す。
 それから身を起こし、半端になっていた服を全て脱ぎ捨て、綱吉の残っていた服も全て取り去る。
「はい、もう何をしてもいいですよ」
 そうした上で、そう告げると、綱吉は一瞬驚いたように目をみはり、それから噴き出した。
「君って、時々すごく馬鹿だよね……!」
「はい」
 くすくすと笑いながら馬鹿と言われるのは、ひどく耳に心地良かったから、獄寺は真面目に肯定して、綱吉をぎゅっと抱き締める。
 汗に薄く濡れて熱を帯びた素肌が、ぴったりと重なるのは身体を繋ぐのとはまた違った心地良さで、綱吉もそう感じるのか、細い腕がぎゅっと抱き返してきた。
「……もう、俺たち、すっごく馬鹿みたいじゃん」
「嫌ですか?」
「ううん。馬鹿でいいよ。二人一緒で」
 こんな風に昼間から抱き合うのも、愛撫を競い合うのも、うんと馬鹿みたいで、うんと楽しい。
 そんな風にまなざしで伝えてくる綱吉に獄寺も全く同感だったから、肯定の返事の代わりに深く口接ける。やわらかな舌が絡み合えば、身体は即、先程までの熱を思い出して、もっと触れたいと自然に手も動き出す。
 キスをしながら体勢をずらして横向きに向き合う形になり、綱吉の手が再び自分の熱に伸びてくるのを感じながら、獄寺も綱吉の身体の輪郭をゆっくりと手のひらで辿った。
 ほっそりとした脚の線も手が届く限りまで触れ、ゆっくりと上まで戻ってくる。
 そして、やわらかな繁みをかき分けるようにして熱に触れるか触れないかの指先での微妙な愛撫を繰り返すと、獄寺の熱をやわらかく弄んでいた綱吉の手が震えて止まった。
 頃合かと見て、獄寺は微妙な愛撫を続けながら、低くささやきかけた。
「ここから先は、俺に任せてもらってもいいですか……?」
 その声にすら綱吉は小さく肩を震わせながら、まなざしを上げて獄寺を見る。
 深い琥珀色の瞳は熱に潤んで、金褐色の睫もかすかに震え、薄く開かれた唇からは喘ぐような浅い吐息が零れる。
 体内でくすぶる熱を持て余したその表情に獄寺がぞくりとするのと同時に、綱吉は小さくうなずいた。
「……キスして…」
 吐息交じりの声でねだられて逆らえるわけがない。貪るように深く口接けながら、獄寺はもう一度体勢を入れ替えて綱吉を組み敷く。そして、首筋から胸元へ、更に腹部へと、これまでの愛撫を辿り直すように唇と舌を這わせた。
「っあ…隼、人……っ、……あ、ん…っ…」
 過敏になりすぎた肌は、どこに触れても甘い嬌声が上がる。
 すすり泣くような声を甘く聞きながら、獄寺はすべやかな内股に舌を這わせ、そして綱吉の張り詰めて震えている熱へと口接けた。



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