天の滸(ほとり) −第3話−
よく分からない奴だ、と思った。
父が父なら息子も息子とでもいうべきだろうか。長すぎる旅の途中で行き逢った父子は、呆れるほどによく似通った性情を持っていた。
その父子の共通点でもある特徴は、強烈なまでの存在感だろう。
まず最初に出会った父親の方を一目見て、神のごとく熱烈に敬愛され尊崇されるか、真逆に蛇蝎のごとく嫉(そね)まれ嫌われる、そのどちらかしかないタイプだと直感したが、予想は外れなかったばかりか、息子の方はそれに輪をかけていた。
つまるところ、それは自分にとって危険をもたらすタイプでしかないということだったのだが、しかし、更に具合の悪いことに、こういうタイプにはその場限りの言い逃れは通じないことも自分は重々承知しており、結局、うまい口実を思いつけないまま、彼らから離れるタイミングを見失ってしまったのだ。
───その失態が、自分にも彼らにも計り知れぬ不幸をもたらすということは、分かりすぎるほど分かっていたというのに。
隣りを歩いていたシェイランが、ふと何かにまなざしを留めて眉をひそめたのは、東西のバーゼル通りをひとめぐりし、また街の中央へ戻ってきた時だった。
さてこれからどうするか、というように通りを見渡した視線が、街路の端で停まったのに気づいて、テッドも何の気はなしにその視線の先を追いかける。
最初のうち、シェイランが何を見ているのか分からなかったが、二度ほどまばたきをした後、何が彼の興味を惹いたのかを理解し、けれど、彼がそれに興味を抱いた理由が分からずにテッドは内心首をひねる。
が、それについて深く考えるよりも早く、シェイランが動いた。
「マーシア」
昼下がりの雑踏の中でもよく透るシェイランの声に、疲れ果てたように道端にうずくまっていた少女が、ぱっと顔を跳ね上げる。
その幼い顔は、傍目にも分かるほどに怯えと不安の色をにじませていたが、きょときょとと周囲を見回し、自分に向かって歩み寄ってくる少年に気づくと、表情を一転させて微笑未満の安堵の色を見せた。
「若様」
「やあ。また会ったね」
「はい」
慌てて立ち上がり、こくりとうなずく様子は、幼かった。
みずぼらしい色合いの古着を身に着けた、とにかく細い体には肉らしい肉がついておらず、背丈も低い。十歳くらいだろうか、とテッドは当たりをつけながら、ゆっくりと二人の傍まで歩み寄る。
少女の傍らには、彼女には大きすぎる運搬用の大籠が置いてあり、その八分目くらいまで熟れたプラムが入っている。シェイランもそれに気づいていたようで、何気ない調子で少女への言葉を続けた。
「今日はプラム?」
「……はい…」
問われた途端に少女の表情は翳り、泣き出しそうなくらいに、しょんぼりとうなずく。
その理由は、初めて彼女に行き逢ったテッドにもうすうす察せられた。
おそらく彼女は、商家で養われている身なのだろう。
そして、今日は、とシェイランが言うからには、いつも何かしらの品物──幼い身には重過ぎる量の果物のたぐいを売りさばくよう、主人から命じられているのに違いない。あるいは、それらの全てを売り切るまでは帰ってこないように言われているのか。
つぎの当たった古着を着た少女と、対照的に、貧しい店舗には到底仕入れることが不可能であろう艶々と光る見事なプラムでいっぱいの大籠を交互に見やりながら、確かに悪い商売のやり方ではない、とテッドは思う。
美しく模範的なやり方であるとは到底言えないが、みずぼらしく痩せこけた少女が道端で懸命に果物を売っていれば、多少なりとも情のある人間なら憐れみを覚えて、一つ二つと買ってやりたくなるものだ。
その辺りの人情の機微はさておき、彼女の主人は狡猾かつ貪婪(どんらん)であるらしいと想像を馳せるのに、目の前の少女の様子は充分に過ぎて、そんな彼女にどう対応するつもりなのか、少しばかり興味を惹かれてテッドはシェイランを目の端に捉えた。
「そう」
うなだれた少女に短く応じ、シェイランは口を閉ざす。
何かを考えているな、と感情の浮かびにくい端麗な横顔をひそかに伺っていると、シェイランはふっと腰をかがめて、少女の顔を覗き込むようにして目線を合わせた。
「マーシア、ちょっと話をしたいんだけど、いいかな」
「はい……」
訝しげにまばたきしながらも、少女はうなずく。
その案外にしっかりした仕草に、黙って二人を見ていたテッドは、十歳くらいと見当をつけた少女の年齢は、実際はもう少し上かもしれない、と思い直す。
だが、そんな傍観者にかまわず、シェイランは少女へ語りかけた。
「実は今、僕の家では、お勝手の手伝いをしてくれる女の子を探しているんだ。ちょっと人手が足りなくなってしまってね。それで、もし良かったら、マーシア、僕の家で働いてもらうことはできないかな」
「──若様の…?」
唐突に過ぎる申し出に、少女は目をまばたかせる。
「そう。僕の家は知っているよね」
「はい。知ってますけど……」
言いながらも、明らかに少女は逡巡していた。
それも当然だろうとテッドは思う。
二人の様子から察するに、少女とシェイランは以前から言葉を交わす程度の知り合いであるようだが、みずぼらしい果物売りの少女と、近隣諸国にまで名を馳せるマクドール候の嫡男とではあまりにも身分と立場に隔たりがあり過ぎる。
それをいきなり自家の雇い人にしたいと申し出た所で、少女にしてみれば戸惑うしかないに違いない。
だが、ただ戸惑うだけには留まらない光が、ほんのかすかに少女の瞳にまたたくのをテッドは見逃さなかった。
「でも、あたしはワールズさんのお店で……」
「うん、知っているよ。君が、朝から晩まで本当に一生懸命働いているのも知ってる。だから、そういう働き者の君に、うちに来て欲しいと前から思っていたんだ」
藍青の瞳に優しい笑みを浮かべて、シェイランは言葉を重ねる。
「勿論、ワールズへの話は僕の方からする。僕の家は今、本当に困っていてね。君さえ良ければ、今晩からでも家に来て欲しいくらいなんだよ」
「でも、あたしは……」
「マーシア」
シェイランは、痩せっぽちの少女の手を取らんばかりの熱意で言った。
「マーシア。君が何を気にしているのかは知っている。でも、ワールズの店に居たら、それこそ一生、ご両親の借金は返せないよ。それは君も分かっているだろう?」
その言葉がどういう意味だったのか、少女の淡い灰色の瞳に、みるみるうちに涙が浮かぶ。
同時に、彼女の瞳に微かにまたたき始めていた光──おそらくは『希望』という名の──も輝きを強めてゆく。
二人を眺めていたテッドは当然、少女の瞳の奥で揺らめく輝きに気付いたが、ましてや間近で見ているシェイランが、それに気付かないはずが無く。
「僕の家においで。借金は一旦、僕の家の名前で肩代わりするから、僕の家で一生懸命働いて、給金の中から少しずつ返してくれればいい。大丈夫、マーシアみたいに良く働く子なら、すぐに全部返せるよ」
この上なく誠実に響くシェイランの言葉に、声もなく少女はぽろぽろと涙をこぼし始めた。
懸命に涙をぬぐう小さな手は、まだ子供っぽいのに、肌はひび割れてかさつき、汚れていて。
「うちにおいで、マーシア」
その甘やかなほどに優しくささやく声に抗いきれず、
「はい……。はい、若様……」
少女は、涙をぬぐいながらかすかにうなずいた。
「よし、いい子だ」
シェイランは笑み、背筋を伸ばすと上衣の内側から白い手布を取り出して、辺りを見回す。そして、手近な店におもむろに足を踏み入れ、ペンとインク壺を貸してくれるように頼んだ。
そして借りたペンを広げた手布に走らせ、何事かを書き付けると、店主に軽く礼を言って戻ってくる。
それから、右手の小指にしていた銀製の透かし彫りの指輪を外し、手布と一緒に少女に渡した。
「このまま僕の家に行って、門番にこれを渡すといい。すぐにグレミオが出てくるはずだから。グレミオは覚えているね?」
「はい。綺麗な金の髪の、すごく優しいお兄さん……」
「そう。僕もすぐに戻るから、先に行っていてくれるかい」
「……はい…。でも……」
「ワールズのことは心配しなくていいよ。ああ、今から彼の店へ行くけど、持ってきて欲しいものはあるかな」
その言葉に少女は少しだけ考え、力なく首を横に振った。
「ないです。父さんが買ってくれたお人形も、母さんが作ってくれた服も、全部、取り上げられちゃったから……」
「──そう」
それ以上を言わず、シェイランは少女の傍らに置かれているプラムの入った大籠を見やり、そして周囲へと視線を走らせる。
彼が何を探しているのか気づいて、それまで黙って成り行きを見ていたテッドは顎をしゃくるように、ある店舗の前を示した。
「あれだろ」
「ああ、うん。そう。目敏いね」
意を得たりとうなずき、シェイランは足早にそちらへと歩いてゆく。
その後姿を見るともなしに眺めていると、横方向からの視線を感じた。
「……何だよ」
マーシアと呼ばれていた少女が、じっとこちらを見上げている。
愛想のないテッドの口調と表情に気後れしたようだったが、それでもおずおずと首をかしげ、問いかけてきた。
「お兄ちゃんは若様のお友達……?」
「いいや。只の居候」
「じゃあ、お兄ちゃんも若様のお屋敷に居るの?」
「今のところはな」
「そうなの」
テッドの返答に、少女は少しばかり考え込む。
「あのね、あたしはマーシアっていうの。お兄ちゃんは?」
「……テッド」
テッドお兄ちゃん、と納得するように小さくつぶやいて。
少女はテッドを見上げる。
薄汚れてそばかすの散った顔は、綺麗に洗ってもう少し肉をつければ、それなりに可愛いだろうと想像できる程度のものだったが、その大きな淡い灰色の瞳は、陽光を受けると澄んだ極上の銀色に輝くことにテッドは気づいた。
「あのね、あたしの父さんは、ワールズさんのお店で働いてて、いつも若様のお屋敷にお野菜や果物を届けてたの。もう死んじゃったけど……。あたしもよく父さんと一緒にお屋敷に行って、時々、若様ともお話したの。だから、今も若様は市場にいらっしゃると、あたしに声をかけて下さって、果物を沢山買って下さるの」
幼いなりに自己紹介をすべきだと思ったのだろう。父さんとお屋敷に行くと、若様はいつもとても美味しいお菓子をくれた、と子供らしくない遠い目で言い、少女は通りを見つめる。
その瞳が、雑踏の中を戻ってきたシェイランを認めて、仄かに輝いた。
「マーシア、荷車を借りたから、あれにプラムを載せていくといい。それで、グレミオに今夜のデザートはプラムのフランにするように伝えてくれないか?」
「プラムのフラン?」
少女が細いのどをごくりと鳴らしたのが聞こえるようだった。
「勿論、マーシアの分もあるよ。うちでは皆同じように、夕食の後はデザートを食べるんだ」
「すごい……!」
「今日から、マーシアも仲間入りするんだよ。さあ、指輪を落とさないように気をつけて、先に行っておいで」
「はい!」
甘いものに餓えていたのだろう。子供らしい反応でたった今までの悲嘆を忘れ、目を輝かせて、少女はシェイランが大籠を乗せた手押し車を押し始める。
その小さな後姿が雑踏にまぎれるまで見送って、さて、とシェイランは少女が去ったのとは明後日の方向に向かって歩き始めた。
「あれで、あの子は十二歳なんだよ。小さいだろ?」
「十二?」
「そう」
見た目よりも多少上かと思いはしたが、さりとて十二歳には到底見えなかった少女の姿に、テッドはかなり本気で驚く。
「まったく知らない子でもないからね。本当は、こんなことをするのは僕の性分じゃないんだが……ああ、この店にちょっと寄るから」
言いながら、シェイランは通りの中でも一際目立って立派な店構えの商店の入り口をくぐる。
看板や飾り窓に展示された商品から、一目でそこが皮革商であることは分かったが、店内に一歩足を踏み入れると、上物のなめし革の独特のにおいが驚くほどに鮮明で、思わずテッドは鼻をうごめかした。
「これはこれは、マクドールの若様。ようこそおいで下さいました」
「今日はフィジュールに用があって来たんだが……彼は今、手隙かな」
シェイランの顔を見るなり、丁重に出迎えた店員は、更に丁重に頭を下げる。
「勿論でございます。すぐに御案内致しましょう」
名家中の名家であり、また上等な皮革製品をとかく消耗する武官でもあるマクドール家は、この店の上も上の大得意先なのだろう。店員は這いつくばりそうな勢いで、二階にある部屋へとシェイランとテッドを案内する。
その部屋は、店主の居間で応接室も兼ねているらしく、落ち着いた風合いの重厚な装飾品で彩られており、何やら分厚い帳簿をめくっていたらしい初老の店主は、立ち上がって二人の少年を迎えた。
「ようこそおいで下さいました、シェイラン様。今日は何やら特別な用がお有りとか……」
「そうなんだが、君の期待には応えられないと思う。実は、金を借りに来たんだ。急に入用になったんだが、あいにく手持ちがなくてね」
苦笑しながら告げたシェイランに、店主は穏やかに目元をほころばせる。が、その目の端に老舗の主人らしい鋭いものがあるのをテッドは見逃さなかった。
「それはそれは。そのあたりの両替商でなく、我がド・レイズ商会をお訪ね下さるとは光栄だと申し上げねばなりません。して、いかほど御用立てすればよろしいのですか?」
「これまた、君を失望させる答えで申し訳ない。三十枚もあれば十分だ」
「そればかりでよろしいのですか? シェイラン様の御要望とあれば、その十倍でも二十倍でも御都合いたしますが」
「いや。二十枚でも釣りがくるくらいのことなんだ。ただ、訳あって今すぐ屋敷まで取りに戻るわけにいかなくてね。通り道を幸い、厚かましくもこちらに来たというわけだよ」
「そうでございましたか。承知いたしました。すぐに御用意いたしますので、しばしお待ち下さいませ」
「ああ。面倒をかける」
鷹揚にシェイランはうなずき、店主は呼び鈴を鳴らして店員を呼び、小さく指示を与える。
それから待つことしばし、テッドが、シェイランが自邸に戻らずここに金を借りに来たのは、少女に彼女を買い取る金を持ち出すところを見られる可能性を潰したかったからか、それとも単に面倒だったからか、と推測しているうちにノックが響いて、戻ってきた店員が小さな皮袋を店主へと渡した。
店主はちらりと中身を確かめ、それを恭(うやうや)しくシェイランへと差し出す。
「助かるよ、フィジュール。今日の日没までには返済する」
「いえいえ、そんなにお急ぎになられずとも構いません。いつでも都合のよろしい時に……」
「いや、借りたものは即座に返すのが、我が家の流儀だ。それに一晩経てば、僕相手でも利子をつけないわけにはいかないだろう?」
「そんな滅相もない」
「構わないさ。商人が金を貸したら、相手が誰であれ、期間に見合った利子を取って当然だ」
笑い、そしてシェイランは、ちらりと傍らに無言でいたテッドの方へと視線を流した。
「それから、フィジュール……」
「シェイラン様」
咄嗟に、低く彼の名を呼ぶ。
マクドール家の御曹司の言葉を、従者にすら見えない身なりの少年が遮った無礼に、店主がかすかに目を動かすのが見えたが、しかし、テッドはそれ以外に彼の言葉を止める方法を思いつかなかった。
そしてシェイランは、初めて名を呼んだテッドの声に、明らかに意表を衝かれたように一つまばたきし、だが表情には快も不快も出さず、店主へと視線を戻す。
「──そうだな、無駄話をしている暇はないか。フィジュール、頼みたい品があったんだが、今はちょっと時間がないから、近いうちにまた来る。何かめぼしい物があったら、その時まで取っておいてくれないか」
「ええ、喜んで。その時は拙店においでになられずとも、わたくしの方からお屋敷に参上致します」
「いいや、フィジュール。店内に並んでいる品物を吟味するのも、僕の楽しみの一つなんだから、それを取り上げないでくれ」
闊達に言い、シェイランは辞去を告げた。
「面倒をかけてすまなかった。また来る」
「はい。テオ様にも、どうぞよしなにお伝え下さいませ」
「ああ」
来訪した時と同様、這いつくばるような丁重さを見せる店員に見送られて、シェイランとテッドは連れ立って店を出る。
そして、数歩店から離れたところで、シェイランがテッドを振り返った。
「すまなかった、テッド」
短い謝罪だった。
が、テッドは小さく目を見張る。
───シェイランが、自分が名を呼んだ意味を正確に洞察したのは、その後の話の持っていき方で分かっていた。
だが、それすらにもテッドは驚いたのだ。
シェイランが、名を呼ばれて何かと問い返してきたら、急ぎの用なのだろうと話題を転換させるつもりでいたのに、彼はたった一言で、皮革商に紹介されたくない自分の意図を読み取り、さりげなく話を流したのである。
もともとマクドール邸には常に複数の食客が滞在しているようだったから、そういう謂わば無頼の輩の考え方や扱い方には慣れているということなのだろうが、それにしても大貴族の子弟、それも歳若い少年が見せる態度ではない。
長い旅の間に、高貴な身でありながら気さくに振る舞う人格に出会ったことがないわけではなかったが、しかし、いくら父親の客分であるとはいえ、大貴族の嫡男が流れ者の庶民に謝罪をするなど、まず滅多にあることではなかった。
「僕はまだ行くところがあるけど、君はどうする」
テッドが言葉を返せないでいる間に、シェイランはいつもと同じ口調で問いかけてくる。
暗に、自分と連れ立っていると否応にも人目につくから別行動をしてもいいのだと言われているのだと察して、テッドは少し考え込んだ。
確かに、これ以上シェイランと共に居るのは得策ではなかった。
シェイランがどれほど地味な色調の服を着ていようと、人目を惹きすぎないようにさりげなく気配を抑えていようと、彼には持って生まれた存在感というものがある。
黙って歩いていればともかくも、一言でも言葉を交わした相手は、決して彼を──同行者も含めて、忘れないだろう。
───けれど。
「あんたを一人でふらふらさせて、グレミオさんの心象を悪くするのは御免だからな。付き合うさ」
「──賢明かもしれないな。グレミオの機嫌を損ねると、酷い時には食卓から食べるものがなくなる」
テッドの返答に、シェイランは皮肉ではなく小さく笑った。
そして再び通りを歩き出しながら、左手に持った皮袋の重さを確かめるようにする。
「これの届け先は、すぐそこだから」
何を説明するでもなく、それだけを言って石畳の道を歩いてゆく。
訊けば答えるのだろうが、と思ったが、事情は何となく察せられているし、このまま付いてゆけば具体的なことも判明してくるに決まっている。
だが。
(この俺が黙って付いて行く、なんてな……)
どちらかと問われるまでも無く、自分は警戒心が極端に強い方だ。そんな自分が、出会ってから数日も立たない人間相手にする態度ではない。
たかが十六かそこらの子供とはいえ、上手く相手に乗せられているとは思うが、しかし、ただ乗せられているだけではないことも心のどこかで自覚していて。
これからどこに行くのか、何をする気なのか。
いずれについてもさして問いかける必要も感じないまま、テッドはシェイランの半歩後に続いて石畳を踏んだ。
ファイルが長くなったので分割。続きは近いうちに。
とうとうオリキャラが出てきました。多分、少女のほうは今後もシリーズ中にちらちらと出てきます。すみません……m(_ _)m
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