at the backstage

6. −標的251 チョイス終了−

「お疲れさん。何飲む?」
「……コーラ」
「おう」
「サンキュ」
「────」
「────」
「……なあ、獄寺。蓋開けて、ぼーっと持ってるだけじゃ炭酸抜けるぞ」
「────」
「ツナに見惚れんのは分かるけどなー」
「────」
「なあ、いい加減、告白したらどーなんだよ? 少なくともツナはお前のこと、嫌ってはねーぞ」
「……嫌ってはねえ、だけだろ。できっかよ」
「って言って、もう何ヶ月だよ。このドラマシリーズが始まって、もう1年以上経つぞ」
「うるせえ。オレにはオレのペースがあるんだよ」
「……ま、いいけどな。どうせお前の問題で、オレの問題じゃねーし」
「分かってんなら、ほっとけ」
「放っておけたら、オレも面倒がないんだけどなー」
「あ、二人とも。ここにいたのね。──こっちよ!」
「何だよ、千鶴……って叔父貴!?」
「相変わらずうるせぇ奴だな。お前に用事じゃねえよ。おい、案内サンキュな」
「いいわよ、これくらい。じゃ、私は戻るわね」
「ああ」
「人の話聞けよ、千鶴! 叔父貴も! 今日は撮影の予定なんか無かったろ! つーか、てめえの出番なんざ当分ねーだろ!」
「ねえよ。だからお前に用じゃねーっての。──武、お前、時雨と連絡取れるか?」
「へ? オレっすか?」
「ああ。あの馬鹿、この二日間、電話もメールも通じねーんだよ」
「そりゃあ、また充電切れに気付いてねーか、携帯そのものを忘れて出歩いてんじゃ……、あ!」
「何か心当たり、あるのか?」
「兄貴、今、海外っスよ。ドキュメンタリー番組の撮影で、確か台湾に……。あ、やっぱりそうだ。三泊四日で、明日の夜の便で帰ってきます」
「台湾ー!?」
「はい」
「オレがあいつと飯食う約束してるのは、今夜だぞ!? 築地の浜幸の木戸をやっと通してもらえるようになったから、連れてってやるって言いやがったくせに……!」
「あー。そりゃ……忘れてたんでしょうね、完全に」
「またかよ! 何とかしろよ、あのすっとこどっこいの忘れん坊将軍……! つーか、芸能人なら国際通話できる携帯持ってろ!」
「あ、兄貴の携帯、国際電話はできる機種っすよ。ただ、あの性格なんで、海外に出る時いつも設定するのを忘れるみたいで……。連絡はマネージャーさん通じて取れますから、本人は不自由感じなくて気付かないらしいんすよ。すんません」
「クソッ、浜幸だっつーから他の誘いは全部断ってたってのに……。今度、あいつと飯食うときは美人も一緒じゃなかったら承知しねえぞ、畜生」
「てめーがマヌケなんだろ。時雨さんの性格分かってんなら、事務所かマネージャーに予定を確認しときゃよかったんだよ」
「うるせー、ガキ。オレにはオレのやり方があるんだよ。……ったく、仕方ねーな。悪かったな、武。休憩中に」
「いえ、構わないっスよ」
「じゃあな、隼人。あんまり綱吉の足、引っ張んなよ。レギュラー陣の中じゃ、お前が一番演技下手くそなんだからな」
「うるせーっての!」
「……うーん。歩き方、綺麗だよなー。さすがトップモデル」
「単なるキザ野郎だろ」
「ンなことねーって。それにしてもなー。兄貴のヌケ作ぶり、何とかなんねーかな。とばっちりが来なきゃ放っとくんだけど」
「……時雨さんの場合、もう個性の域だろ。どうにかなるっつーレベルじゃねーと思うぞ」
「オレもそんな気はするんだけどなー」
「それに、どんなヌケ作でも、あのクソ叔父貴よりはマシだ」
「そうか? 久しぶりに会ったけど、鷹人さん、相変わらずかっけーじゃん」
「どこがだよ」
「見た目は全部。──なあ、獄寺。そのひねくれ具合、面白いけど、もう少し何とかしねーと苦労するぜ? 現にツナにだって告白できてねーじゃん」
「それとこれと何の関係があんだよ!?」
「あるぜー。一事が万事って言うだろ?」
「繋がってねーよ、全然!」


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十年後獄寺の役は、獄寺の母方の叔父で、12才年上。仮名は鷹人(たかと)さん。トップクラスのショーモデル。ミラノコレクションにも出てます。今回のドラマ出演は、他に適当な役者がいないということで超嫌々。

ビアンキは、その妹で、獄寺の母方の叔母。10才年上。ビアンキは役名ということで、仮名は千鶴(ちづる)さん。モデル出身の美人女優。ちなみに「叔母さん」と呼ぶと殺されます。

なお、三兄弟の長女である獄寺のお母さんは34歳。お母さんも十代の頃はティーンズ誌のモデルで、結婚と同時に引退。
獄寺は14歳のリアル中坊で、連続ドラマは今回が初出演。ツナに片思い中の模様。

7. −標的253 ファレノプシス・パラドックス2−

「ツナ、何飲む?」
「ポカリ」
「はいよ」
「ありがと、山本。獄寺君も座ったら?」
「あ、はい」
「───…」
「───…」
「……どーした、ツナ? 難しい顔して」
「あ、ごめん。さっきの場面のこと考えててさ」
「さっきの、ですか?」
「うん。何だか間が取りにくかったから……オレ、テンポ悪かったと思うんだけど、獄寺君、やりにくくなかった?」
「え? オレは全然……!」
「んー。そうだよね、獄寺君は良かったと思うよ。監督にも駄目出しされなかったし、オレもあれで良かったのかなー」
「気になるんなら、監督に言って撮り直すか?」
「……本音言えば、やり直したいって思うけど、ちょっと無理だろ。オレと獄寺君と入江さんだけだけど、ちょっと長回しのカットだし、入江さんの台詞多いし、スケジュール全体が押してるし。全体から言えば、話の要になるような重大な場面じゃないし」
「我儘になっちまうか」
「多分。入江さんと獄寺君は、オレの出来とは関係無しにいい演技してたしね。撮り直すのは、二人にとっては返ってもったいないよ」
「……あの、」
「何? 獄寺君」
「オレは何度撮り直しても構いませんけど……。そんな褒めてもらえるほど、いい演技したとは思えませんし」
「ううん、良かったよ。すごく気持ち入ってただろ? 一緒にやってて伝わってきたもん」
「それは沢田さんの演技に引っ張ってもらったからで……」
「オレは良くなかったってば。気持ちはそれなりに入ってたんだけどね、あとちょっとのところで、何か乗り切れなかったんだ」
「オレには分かんなかったけどなー。ツナが言ってるのって、本当に微妙なとこなんじゃね? 監督も何にも言わなかったんだし」
「オレも分かんなかったっスよ。やりにくいとかもなかったし……いつもと一緒で、引っ張ってもらってる感じしましたけど」
「うーん。そうなのかなー。そんなものかもしれないけど、でもオレとしてはなー」
「珍しいな、ツナがそんなに悩むのって」
「そう? 兄さんと話してる時とか、いつもこんなものだけど……。あ」
「……オレ、呼ばれてるっス、ね」
「だな」
「……行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「───…」
「───…」
「──獄寺って、いつまで経ってもお前に対する態度、変わんねーのな。もう一年以上一緒にやってんのに、ガッチガチ」
「……何が言いたいんだよ」
「分かってんじゃねーの?」
「────」
「────」
「──オレは何にも知らないよ」
「ツ〜ナ〜」
「知らないったら知らない」
「それ、獄寺が聞いたら泣くぞー?」
「仕方ないよ。こればっかりは、どうしようもないし」
「そうか? でもツナも、あいつのことは嫌いじゃないんじゃね?」
「嫌いじゃないけど、それ以上もないよ」
「嘘だろ、それ」
「嘘でもホント。少なくとも今の間は」
「? どーいう意味だよ?」
「……あのねえ、山本。ちょっとは獄寺君の性格、考えてよ。それと演技力と」
「んー。腹芸ができねえ?」
「できないどころじゃないだろ。演技そのものはこの一年ですごく上達したけど、まだまだ不安定だよ。たとえばプライベートで何かあった時に、スムーズに役に入れないこと、多いし」
「あー。そーいうことな」
「そういうこと。獄寺君は、表現者としてはいいもの持ってると思うけど、プライベートと役の切り替えが上手くないんだ。
 オレは、ほんの子供の頃からこの世界にいるから、プライベートで何があってもカメラが回っている間や、舞台に立っている間は、沢田綱吉じゃない人間になることができる。でも、獄寺君はそうじゃないから、今は駄目なんだよ」
「確かになー。今でも結構ギリギリっぽいもんな」
「そう。だから、山本。下手なこと言って煽ったりしないでくれよ。少なくとも、このドラマがクランクアップするまでは」
「──おう」
「……もう煽ったんだね?」
「……いや、何となく。あいつ見てっと、歯がゆくて」
「…………」
「すまん! この通り、オレが悪かった」
「……もういいよ、やっちゃったことは仕方ないし。その代わり、これ以上は駄目だからね。やったら、もう絶交」
「分かってるって。もうしねーよ」
「そうして」
「でもやっぱり、ツナって獄寺のこと……」
「うるさいよ、山本。その話も、もうおしまい」
「へいへい」


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今週のWJ、一番救われたのは獄寺かなーと。
あの場面を読んだ時に、原作に即したSS書きたいなぁと思ったんですが、バトル中だと話が作りにくくて、断念。

8. −標的254 ユニ降臨−

「あ、ユニ姫、久しぶりー」
「お久しぶりです、ツナさん」
「元気そうだねえ。ちょっと背が伸びた?」
「ツナさんもですよ。ちょっと目線が違う気がします」
「ああ、ユニ姫と一緒になったのは半年くらい前だよね? なら、2cmくらいは伸びてるかも」
「そんな感じです」
「あんまり良くないんだけどねー。こういう長期のドラマ、やってる時は」
「そうですね。成長期なので、どうしようもないんですけども」
「うん。見た目の印象が変わらないうちに、ドラマがクランクアップするといいんだけど。とりあえず座ったら?」
「はい。失礼します」
「でも、本当に久しぶりだよね、顔合わせるの」
「はい」
「映画、どうだった? 今度の春公開だったよね?」
「はい。ママと親子役だったので、やり易いところとやりにくいところと両方あって、大変でした。このドラマだと、出番が完全にずれているので、気にしなくてすんだんですけども」
「あー。私生活と脚本は違うからねえ」
「ちょっと気を抜くと、おうちでの会話の調子になってしまって……。お芝居するのがこんなに難しいと思ったのは初めてです」
「俺も、兄さんと競演した時はそうだったなあ。日常にひっぱられちゃうんだよね」
「はい。逆に、家でも演技の練習ができるので、助けられたところもあるんですけど」
「俺もそうだった。芝居のことになると兄さんも容赦ないから、結構駄目出しされまくったんだけど。本番ではそれが生きたなぁ」
「私も一緒です」
「苦労するよね、親兄弟が同じ役者ってのも」
「でも、家族がこの世界を知ってる人間だっていうのは救われることだって、いつもママは言ってますよ。パパと結婚して良かったって」
「ユニ姫のお父さんは、日本一の名監督だもんね。プロポーズの言葉も伝説になってるし。『君は家のことは何もしなくていい、美しくあることだけを考えてくれればいい』って。俺でも知ってるよ」
「それはその通りですけど……ツナさん」
「うん?」
「前々から思っていたのですが、ユニ姫というのはやめていただけませんか」
「あ、ごめん。嫌だった?」
「あまり好きじゃありません。スタッフの方は皆、そうおっしゃいますけれど……」
「うーん。日本一の名監督と名女優の娘さんだからなぁ。でも、確かに、俺もツナ王子とか呼ばれたらいやだな。じゃあ、ユニちゃん?」
「はい。そっちがいいです」
「うん、ユニちゃん」
「はい」


         *            *


「すっげー豪華な光景じゃね? 天才子役と、元天才子役の天才少年役者の組み合わせ」
「…………」
「反応ねーのな。また何か落ち込んでんのか?」
「──うるせえよ、単純馬鹿」
「お前に単純って言われたくねーけどなぁ」
「────」
「本当に重症なのな」
「──うるせえ」
「……あのさ、自信ねーのなら、目線を変えてみるってのもありじゃね?」
「…………」
「俺の勝手な見方だけど、お前がツナに対して自分に自信持てねーのは、突き詰めれば、芝居の話だろ? でも、差があるのは当然じゃん? ツナは4歳の時から舞台に立ってるわけだし、お前は中学生になってから、このドラマが本格デビューだろ?」
「…………」
「スタートラインからいえば、追いつけるわけねー。でも、ツナに追いつけなくても認めてもらいたいんなら、このドラマで頑張るしかねーだろ? 実際、お前は必死にやってるし。俺から見ても、一年前より遥かに上手くなったと思うぜ」
「……てめーに褒められても嬉しかねーよ」
「どうせ今、告白する勇気がねーっていうんなら、このドラマがクランクアップするまでに、それだけの自信が持てるよう努力すりゃいいんじゃねーの? 努力することだけなら、お前、得意だろ」
「だから、お前の言い方は全然励ましになってねーんだよ。それに言われなくったって、それくらい分かってるっての」
「分かってんなら、頑張りゃいいじゃん。俺が見る限り、ツナは本当にお前のことは嫌ってねーよ」
「……うるせーよ、馬鹿」


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ユニ姫とツナが並んでお話していたら、すっごく可愛いと思うのです。
ユニ姫は匣兵器、持ってるのかな?
ユニ姫の匣兵器も、なんだかふかふかした生き物で、ナッツと一緒に二人の足元で仲良しにたわむれていたら、なお可愛さ倍増だと思うのですが。
いいなぁ、和み系ボス。(でも怒らせたら最強。)

9. −標的262 再会−

「ツナさん、こっちに来て下さい!」
「え? あ、何? ユニちゃん?」
「いいですから、こっちです!」
「──って、どうしたの。控え室まで来て……。どっか具合悪い?」
「いいえ、悪くありません。あ、いえ、悪いかもしれません……っ」
「? とにかく落ち着いて。はい、お茶」
「あ、すみません」
「いいよ。とりあえず、お茶飲んで、一つ深呼吸して」
「…………ふぅ」
「落ち着いた?」
「……ちょっとだけ、そんなような気が」
「うん。そのちょっとが大事なんだよ、舞台なんかじゃね。ユニちゃんなら分かるだろ?」
「……はい」
「うん。じゃあ、落ち着いたところで話しよう。オレに用があるんだろ?」
「あ、はい……。でも用というか……」
「うん?」
「あの、ツナさん。私、さっきの場面、おかしくなかったですか?」
「さっきのって……ガンマさんとのシーン?」
「……はい…」
「オレは良かったと思うけど……」
「でもでも、顔赤かったりとか、不自然なとこ無かったですか?」
「ああ、そういうこと。ううん、全然」
「そんな、正直に言って下さい、ツナさん! 絶対にヘンだったでしょう!?」
「大丈夫だよ、ユニちゃん。本当に良かった」
「嘘です!」
「嘘じゃないってば。大好きな人にやっと会えて、泣きたいくらいに嬉しくてドキドキしてるのがすっごく伝わってきたよ」
「〜〜〜〜〜っ」
「ユニちゃん、そんなとこにへたりこんじゃダメだよ。床、冷たいだろ?」
「だって私、女優失格です……」
「どうして」
「だって……」
「失格なんて、全然そんなことないよ。すごく自然だった。本当の気持ちを上手に生かした、すごくいい演技だったと思うよ」
「……本当ですか?」
「本当だってば。第一、ダメだったら撮り直しになってるよ。一発OKだったんだから、もっと自分の演技を信じてもいいんじゃない?」
「────」
「大丈夫だよ、ユニちゃん」
「……ツナさんが、そう言うのなら……」
「うん。ほら、立って。衣装が汚れちゃうよ」
「はい……すみません」
「でも、ユニちゃんは本当にガンマさんのこと、好きなんだね」
「はい。……おかしいですか? 年が十五歳も違うのに……」
「全然。誰かを好きになるのって、すごく大事なことだと思うよ。ちょっとしたことで嬉しかったり苦しかったり……。でも気持ちは、どうやっても止まんないんだよね」
「…………」
「ん? 何?」
「ツナさんも好きな人、いるんですか?」
「え、あー……」
「いるんですね」
「って、どうして笑うかなぁ。いたら、おかしい?」
「いいえ、おかしくて笑ったんじゃなくて。何となく嬉しくて、安心したんです。誰かを好きで、いっぱい考えちゃうのはツナさんも一緒なんだなって」
「……まあ、皆一緒なんじゃない? 上手に恋ができる人なんて、きっといないよ」
「そうなんでしょうか……」
「お芝居の脚本でも恋愛物が多いってことは、それだけ悩む人も、お話に共感する人も多いってことじゃないかな。きっと皆、誰かを好きになって悩んだり嬉しかったりするんだよ」
「そうかもしれませんね」
「そうそう。じゃあ、元気出た? 現場に戻れる?」
「はい、もう大丈夫です。ありがとうございました」
「どういたしまして。それじゃ、行こうか」
「はい」


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ガンマにきゅんきゅんするユニちゃんが可愛くて、読んだ瞬間に思いついた話。
なのに、書くのにこんなに時間がかかってしまって、すみません。

ユニちゃんが、有名監督と名女優の娘っていうのは前に書いたかな。
ガンマは、ユニちゃんのママと同じ劇団出身の俳優さんです。このドラマと平行して、ツナのお兄さんの家康さんとも舞台で競演中。

10. −標的277 不運−

「……来やがったな」
「──おい、敬愛すべき叔父に向かって、来やがったとはどういう了見だ、このクソガキ」
「来やがったものを来やがったと言って何が悪い、クソ叔父貴」
「相変わらず口の減らねえガキだな。一度シめてやんなきゃなんねーか?」
「はっ、やれるもんならやってみな。自慢のツラをボコボコの青タンだらけにしてやるぜ」
「てめーにやれるもんかよ。一発かすりでもできりゃ、拍手もんだ」
「そりゃこっちの台詞だ。てめーがでかいツラできんのも今日までだ」
「口先だけなら何とも言えるよなぁ? ぐだぐだ言ってねーで、かかってこいよ、クソガキ」
「──挑発したことを後悔するんじゃねーぜ、クソ野郎」

「って、何やってるの、獄寺君」

「うあっ!」
「っ、沢田さん!」
「まったく……。鷹人さんも時と場所を考えて下さいよ。これから本番なんですから」
「すみません! でもこのヤローが……!」
「人のせいにすんな、クソガキ。最初に因縁つけてきたのは、てめーだろうが。──でも、ツナ、悪かったな。このクソガキのツラ見てると、どうも家にいる気分になっちまうんだ」
「まあ、その気持ちは分かりますけどね。オレも兄さんとだとやりにくいと感じることはありますし。……って言ってたら、張本人が来ちゃったや」
「ツナ、ここに居たか」
「うん。また獄寺君と鷹人さんが暴発しそうになってたから、止めてた」
「ちょっ、沢田さん、何も家康さんに言いつけなくても……!」
「あ、大丈夫。獄寺君には火の粉飛ばないから。ほら」
「へ?」

「まったく……何を考えてるんだ、鷹人。毎回毎回、十も年下の甥に突っかかって……」
「おい、オレのせいにすんなよ。因縁つけてくるのは隼人の方だぜ」
「子供が売ってきた喧嘩を買う大人がどこにいる。恥を知れ」
「恥を知れって、お前……」
「大体何だ、その顔の刺青は。まるでヤクザじゃないか」
「ヤクザじゃなくて、マフィアの役だっつーの。文句があるんなら監督に言え、監督に」
「にしても趣味が悪い」
「そうか? オレは結構気に入ってんだけどな。契約があるから、普段は顔に限らず刺青なんて絶対に入れらんねーし。まあ、ショーでペイントすることはあっけどよ」
「悪趣味だ。肌に傷をつけて何が楽しい」
「だから、ボディーペイントだって。一時的に顔料で染めてるだけだろ」
「それでも気に食わん」
「だーかーらー、面白がってはいるが、好きでやってるわけじゃねーっての。監督からの強制命令なんだから、従うしかねーだろ」
「でも、私は気に食わん。だから、今日はお前、私に近寄るな」
「おい、そりゃひでーぞ」
「第一、お前と幼馴染というこのドラマの設定も気に食わないんだ。どうして出番の度に、お前と撮影が重なるのか……」
「大人組の出番は大体固まってんだから、仕方ねーだろ。それより近寄んなって、今夜の飯はどうする気なんだよ」
「まさか飯を食いに行く時まで、その悪趣味な刺青をしているつもりではないだろう? もしそのつもりなら、私はツナと家に帰る」
「幾らオレでも、ペイントしたまま築地に行くかよ。大将に叩き出されちまうだろ。──はいはい分かりました。仰せに従いますよ、ボス」
「取ってつけたような敬語はやめろ。気色悪い」
「……ああ言えば、こう言うし。お前、本当はオレのこと嫌いだろ」
「そうだな、少なくとも好きではない」
「うわっ、ひでえ」

「……なんかすごいっスね、家康さん。オレ、尊敬します」
「兄さんも、もう少し鷹人さんに優しくしてあげてもいいのにねえ。昔からの腐れ縁だからって、ちょっとボロクソすぎ……」
「いえ、クソ叔父貴なら、あんな程度でいいんスよ。上等過ぎるくらいっス」
「んー。でも、やっぱり鷹人さんが可哀想かな。あんなに見え見えなのに」
「へ? 何がっスか?」
「……ううん、ちょっと独り言。それじゃ、俺たちもそろそろ準備しようか、獄寺君」
「あ、はい」


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前にも設定は書いてますが、過去ログに沈んでいるので、もう一度。

十年後獄寺&初代嵐の守護者役は、獄寺の母方の叔父・鷹人さん。本業はショーモデル。
初代ボンゴレ役は、ツナのお兄さん・家康さん。天才肌の舞台俳優で、TVドラマには滅多に出ない。
これに、十年後山本&初代雨の守護者役の山本の兄・時雨さん(実力派時代劇俳優)が加わると、三羽烏のできあがりです。

to be continued ?.

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