SACRIFICE  -ultimate plumage-

あとがき








 改めまして。
 このどうしようも長く、そして文章量以上に長年に渡った連載を見て下さってありがとうございました。
 心より御礼を申し上げます。
 以下は、間違いなく余韻を台無しにするあとがきですので、御覧になりたくない方は、素早く回れ右をして離脱なさって下さい。

 ……残られた方、お気持ちのご準備はよろしいですか?
 よろしいですね。
 では。

 さて、『SACRIFICE -ultimate plumage-』。
 これの第1話をupしたのはサイトの開設時でしたので、足掛け11年の連載だったことになります。
 その中でも、第14話から最終話までの恐ろしい空白時間。ほぼ丸6年です。まさに死あるのみ。
 後半になるにつれ、テーマが一層重くなっていく構成でしたので、その分書くのに覚悟が要った……というのは、事実ですがほぼ言い訳です。どの章も、書き始めたらものすごいスピードで進みましたので、決して書きにくかったわけではありません。最終話も、執筆期間は延べ日数でいったら10日程、時間にして15時間ほどかと思います。
 ただ、書くべき時期、というのはあったかなぁと思います。最終話だけはプロットから少しだけ展開が変わったのですが、その新しい筋が私の中で生まれ、熟成されるための時間は必要だったかな、と。

 数年前に書いていれば、当初のプロットのままだったと思うのです。最初に全話のプロットを作った頃は、それでいいと思っていたのですが、十年も経つと自分の中で自然に納得がいかなくなったんですね。
 簡単に言えば、宿の夜のシーンで呂望が、楊ゼンに「辛かったですね」と言われて「うむ、辛かった……」と泣き出すというような感じだったのですが、いざ、書き出してその場面に差し掛かったら、なんか違うな、と。
 会話がどうやってもその方向にゆかず、流れに任せたら、涙無しに呂望が自分らしさを取り戻すこの展開になりました。
 プロット通りの方が叙情的で良かった、とおっしゃる方もあるでしょうけれど、私個人としては強い師叔が好きなので、これで良かったと思っています。
 涙の場面は、また直ぐ後にありますので、当初通りだと涙のシーンが重なることになってインパクトが薄れますしね。

 この作品は、本当にキャラが良く動いてくれましたし、それぞれに良い味を出してくれました。
 登場人物は実質3人のみの少人数の劇でしたけれども、これくらいの人数が私は書きやすいようです。
 本当に書けて良かったなぁと思います。そして、完結させることが出来て(笑)
 いや、長年待たされた方々には笑い事ではないと思うのですけども。

 物語はこれで終わりですが、蛇足を書くと、今後の二人はウールの村に無事に定住して、そこで暮らすことになります。
 小さな畑を作って、呂望は村の子供たちに勉強を教えたり、楊ゼンは力仕事や細工物作りをしたりしながら、のんびり平和に笑って暮らします。
 そして、およそ十年後に楊ゼンが寿命で先に逝き、彼を看取った呂望も、妹に少し雰囲気の似た村娘に看取られながら一年後に寿命で逝きます。
 二人が生きているうちに戦争が終わることはありませんでしたが、戦火は東の果てには届かず、数十年後に民衆の反政府運動が東西共に激化してきたことにより、戦争はうやむやに終わります。もっとも、それで平和な世の中になるわけではなく、地域単位で騒乱は続いてゆくのですが、その辺は遠い未来の話です。

 オリジナルの世界設定に加え、軍事物という二次創作としては読み手に対するハードルの高い作品でしたが、改めて最後まで見て下さってありがとうございました。
 おしまいに、この作品を構築する上でインスパイアを受けた作品の一覧と、執筆を支えてくれたBGM(全て単曲のインストゥメンタルです。アルバム単位ではありません。)を挙げておきます。


・永野譲 『ファイブスター物語』
・華不魅 『GLAMOURASS GOSSIP』
・高橋しん 『最終兵器彼女』

・宗次郎 「大黄河」、「精霊の森」
・エア・エレメント 「フレグランス」、「マインド・トラベル」
・メサ 「レクイエム」、「マホバ」
・柴田敬一 「地涌の菩薩」
・寿和 「クリスタル」、「モンゴルへの道」


2012.3.26.
古瀬晶 拝

 



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