銀曜日のおとぎばなし 5
いつのまにか、美しい月が昇っている。
夏前の夜空の深い藍に映える、そのやわらかな輝きをバルコニーから見上げながら、王天君は前髪を軽くかき上げた。
* *
再従妹にあたる少女と知り合ったのは、10年ほども前のこと。
奔放な母親の存在ゆえにぎくしゃくしがちだった家の中で、唯一自分を可愛がってくれた祖母が、彼女の実家である元始伯爵家へ連れて行ってくれた時、紹介されたのが、当主の孫娘でまだ5歳になるかならないかの小さな女の子だった。
人懐っこく笑みを浮かべて挨拶をした黒い髪に大きな緑の瞳の少女は、確かにとても可愛らしかった。とはいえ、やんちゃざかりの自分の遊び相手には到底なると思えず、庭で一緒に遊ぶように言われても、正直なところ、うざったいと思っただけだった。
だが、祖母は久しぶりに会った兄との茶飲み話に夢中になってしまい、結局、少女と庭に出て行くしかなく。
そうして屋外に出てみると、少女は幼い割に聡明らしく、話す言葉も明瞭に花や木のことを自分に教えてくれた。
しかし、今も昔もそんなものに自分は興味などなくて、枝振りのいい大きな庭木を見つけると、少女を放って登り始めたのだ。
おそらく少女は、庭師以外の誰かが木登りをするところなど見たことなどなかったのだろう。驚いて、危ないから駄目だと何度も高い声で叫んだ。
けれど、やめてと懸命に呼びかける少女の声を無視するのは面白く、かえって自分は興に乗って、上へ上へと枝をよじ登っていった。
だが。
大きな木の半分以上を登り、更に上へ行こうと伸び上がって、枝をつかみかけた時。
足場にしていた古い枝が、突然折れたのだ。
当時まだ10歳かそこらの子供だった自分には、片手だけで体重を支えるなどという真似ができるはずもなく、そのまま地面へと落ちた。
落ちながら、少女の悲鳴を聞いたような気がしたが、記憶は定かではない。
そのまま意識は途切れて、目覚めた時にはベッドに寝かされていた。
一晩中、枕元にずっとついていてくれたという祖母は、その優しいはしばみ色の瞳を見上げた途端に泣き出してしまい、困惑してしまった自分に状況を説明してくれたのは、祖母の兄である老伯爵だった。
高い枝の上から落ちた自分は、頭部をひどくぶつけて、本当ならそのまま死んでいたはずなのだと。
けれど、少女の悲鳴を聞きつけて大人たちがたどり着いた時、血の海に横たわった自分の傍らで、少女は半狂乱になって泣きながらも、傷口に手のひらを押し当て、その身に持つ奇跡と呼ばれる癒しの力を必死にそそぎこんでいたのだという。
そして今、少女は力を使いすぎて寝込んでしまっているのだと、老伯爵は長いひげを苦笑混じりに撫でながら教えてくれた。
到底信じられないような話に驚き、頭をそっと触ってみたが、痛いところはどこにもなく。
かといって落ちた記憶は確かに残っていたし、祖母もすすり泣き続けていたから、それは真実なのだと受け入れるしかなかった。
だが、信じられない気持ちは強く、制止する祖母を押し切って少女の部屋へ行ってみると。
本当に、少女は憔悴して青ざめた顔色で、こんこんと眠っていたのだ。
そして、そのまま丸二日、計三日間、目覚めなかった。
少女が目覚めた時、自分は庭に出て、自分が落ちたために枝が無残に折れた庭木を庭師が手入れしているのを見ていた。
普通なら形が崩れた庭木は処分してしまうのだが、そんな理由で木を切るとお嬢様が怒るから、と壮年の庭師は笑いながら、大きなはさみを器用に動かして、なんとか見苦しさをごまかせるように形を整え治していた。
そこに、少女の意識が戻ったと侍女が告げに来て。
大急ぎで屋敷の中へ駆け戻り、少女の部屋に飛び込んだ。
すると、少女はもうベッドに起き上がっており、自分を見た途端に満面の笑顔になって。
そして、もう痛いところはないかと聞き、ない、と答えると、良かったと本当に嬉しそうにもう一度笑った。
───その笑顔に。
守ろう、と思ったのだ。
我が身を顧みずに、自分の命を助けてくれた小さな少女を。
その屈託のない、明るい花のような笑顔を。
すべてを賭けて守ると、その瞬間、決めた。
* *
「ガキだったよな……」
まだ子供だった。
自分も、少女も。
けれど、だからこそ誓いは神聖で、十年もの間、破られることはなかった。
その根底にあるものが何なのかと問われると、答えるのは難しい。
愛情かと言われれば、そうだとも思えるが違うような気もする。
ただ、優しい小さな少女が大切で、傷つけるものすべてから守ろうと思っているうちにここまできてしまったのだ。
そうするうちに、いつのまにか少女は成長して。
たった一人の相手を見い出してしまった。
「相手が相手だし……惜しくないと言えば嘘になるけどな」
月明かりの下で、王天君は微苦笑を浮かべる。
けれど。
「まぁ、あいつが幸せになれるんならそれでいいさ」
この十年、自分だけのものにしたいとは一度も思わなかったし、いつか手を離すことはずっと覚悟していた。
───否。
あまりにもその存在がかけがえのないものだったから、そんな俗な思考は思いつきもしなかったのだ。
もっとも、今こうして現実を目の当たりにすれば、多少の寂しさも悔しさもある。
けれど、それは決して大きなものではなく、苦笑して収められる程度のものだ。
むしろ、それよりも安堵の方が大きい。
大切に守ってきた少女が幸せになってくれればいいと、浮かんでくるのは祈りのような想いばかりで。
「──泣かせたら承知しねぇからな」
もう一度髪をかき上げながら、笑みと共に呟いて。
そうして一旦バルコニーから大広間に戻り、集った人々を避けながら王天君は真っ直ぐに出口へと向かう。
うやうやしく頭を下げる侍従に元始伯爵家の馬車を呼ぶように言い、更に伯爵令嬢への伝言を頼んで。
王天君はきらびやかな王宮の舞踏会を退出した。
* *
大広間の大きな窓ごとについているバルコニーは、やわらかな月光に照らされて、まるで美しい舞台のようだった。
ざわり…と葉ずれの音を立てながら通り過ぎるそよ風に、結い上げた髪の後れ毛を遊ばせながら、呂望はゆっくりと楊ゼンの後についてバルコニーの端まで歩み寄る。
うつむいた視界に映る絹のドレスの裾が、月の光を受けて淡い薔薇色の真珠のような光沢を帯びるのを、呂望は切ない思いで見つめた。
真新しい、仕立て上がったばかりのドレスを身にまとうのは嬉しいことのはずなのに、今夜ばかりはどうしても気分が明るく持てない。
少しでも気を抜いたら、目の前にいる人のことを忘れてやるせない溜息をついてしまいそうな心をこらえ、うつむいていると。
「───姫君」
響きのいい低い声が呼びかけた。
優しい声に、しかし呂望はびくりと肩を小さくすくませる。
「僕はあなたに謝らなければなりません」
───何を?
何を、と呂望は思う。
やはりプロポーズは間違いだったと、そう言いたいのか。
祖父の財力と癒しの力をのぞいてみれば、自分自身には何の魅力もない。
今、大広間を振り返ってみれば、自分よりもはるかに魅惑的な貴婦人や令嬢は、幾人も数えきれないほどにあふれている。
そのことに遅ればせながら彼は気付いたのかと、泣きたいような気持ちでそう思った時。
「あなたの心を思いやりもせずに、自分本位な言い方であなたを傷つけてしまった。……本当に申し訳ないと思っています」
涼やかな美声が静かに響いた。
「────」
あの時のことだろうか、と先日のプロポーズされた時のことを思い出しながらも、今一つ青年の言いたいことが分からず、呂望はうつむいた顔を上げられないまま、まばたきする。
「あの時……あなたが僕に求婚の理由を問われた時、僕が何とお答えしたか覚えていらっしゃいますか」
ゆっくりと告げられた、その言葉に。
「………はい」
呂望はびくりと反応しながらも、小さくうなずいた。
その様子に何を感じたのか、わずかに沈黙をはさみながらも、楊ゼンは変わらぬ調子で言葉を続ける。
「──あの時、治癒の力のことを僕は挙げましたが、それは嘘ではありません。あなたは本当に素晴らしい力をお持ちだと、僕がそう思っているのは事実です。
……ですが、この言葉にはまだ続きがあるんです」
「───…」
それ以上は言わない楊ゼンに、呂望はその時のことを思い出して頬が熱くなるのを感じる。
あれは、決してあってはならない態度だった。
───貴族の令嬢が、殿方の前から泣きながら走り去るなどということは。
いくら取り乱したとはいえ、礼儀知らず、常識知らずもはなはだしい。
「姫君」
だが、楊ゼンはそのことを咎めることなく、静かに問いかける。
「今、その続きを申し上げることを許して下さいますか?」
───そこまで言っておきながら、何を告げたいのだろうと考えて、呂望はうつむいたまま、そっと胸を押さえた。
素晴らしいと思っているのは、この身に宿る癒しの力。
ならば、それ以上を聞く必要など自分にはない。
それ以上の言葉など聞きたくない。
けれど。
青年の声は、切ないほどに真摯で、請うような響きさえ帯びていたから。
何度かまばたきを繰り返してから、呂望は意を決してゆっくりと顔を上げる。
それは、半ば破れかぶれに近い気持ちだったかもしれない。
だが、ひるむ心の片隅に息衝く、聞かなければならないという想いが、呂望に真っ直ぐに青年の瞳を捉えさせた。
「──お聞きいたします。どうぞ、お話下さいませ」
おびえにも似た揺れる想いを隠し切れない、堅さを残した表情で、しかし月光にきらめく深い湖のような瞳で真っ直ぐなまなざしを向ける少女に、楊ゼンの表情がわずかに安堵の色をにじませる。
「──昔、」
そうして、楊ゼンはゆっくりと口を開いた。
「初めてお会いした時に、僕はあなたのお力を拝見しました。初めて目の当たりにした治癒の力は本当に印象に残って……懸命に牝鹿を癒していたあなたの姿が、僕はずっと忘れられませんでした」
涼しい夜風に、低い声が優しくまぎれて消えてゆく。
微笑してからそっとまなざしをずらし、夜空で輝く月を見上げた青年の横顔を、呂望は見つめた。
「あなたと再会したのは、それから5年後でした。昨年の秋、王宮の舞踏会で……。5年前に比べると、ずっと大人びていらっしゃったけれど、あなたの緑の瞳は何も変わらなかった。
そして、そのすぐ後、あなたの心も……あの日、僕に傷つけられた牝鹿を助けようとなさった時のまま、何も変わっていないと僕は知りました。──あなたの社交界デビューから1ヵ月後の、姫公爵邸での園遊会のことを覚えていらっしゃいますか?」
「はい……」
「園遊会の最中、突然、公爵夫人が心臓の発作を起して倒れられた時、あなたはすぐに駆け寄って夫人の手を取られた。──あの時の公爵夫人の症状は、相当に悪かったそうですね。でも、あなたが御自身が倒れてしまわれるほどの力を注がれたおかげで、危うく一命は取り留めたとお聞きしました」
「あれは……夫人のお気力が強かったのです。公爵もずっと枕元で夫人を励ましていらっしゃって……。ほんの少し、それをお手伝いしただけです」
己の力への賞賛を居心地悪く聞きながら、呂望はやんわりと楊ゼンの言葉を否定した。
それに楊ゼンは、小さく微笑する。
「あなたがそうおっしゃるのなら、その通りなのかもしれません。……でも、僕はその後、父の名代で公爵夫人をお見舞いに行った時、あなたの話を夫人からうかがって嬉しいと思った。
あなたが、初めて出会った時と何も変わっていらっしゃらないことが分かって、僕は嬉しかったんです」
「───え…?」
響きのいい声で紡がれた言葉に、呂望はまばたきして青年の端整な顔を見直す。
その呂望のまなざしを、楊ゼンは真摯な瞳で真っ直ぐに受け止めた。
「僕が嬉しいと思ったのは、あなたが癒しの力を持っていることではありません。傷ついた牝鹿を助けるため、僕の前に立ちふさがれたように、そして公爵夫人を助けるため、御自分が寝込んでしまわれるほど力を使われたように、我が身を顧みずに傷ついたもの、病んだものを救おうとされるあなたの心が嬉しかったんです。
僕がかけがえないと思うのは、治癒の力ではない。その奇跡を弱いものに注がれるあなたの優しさ……、他の何者でもないあなた自身です」
「僕が愛しているのは……初めて出会った時から惹かれ続けてきたのは、あなたという存在そのものです」
はっきりと告げられた告白に。
呂望は大きな瞳を見開いたまま、小さく震える。
月の光を受けて深い色に輝くその瞳を、楊ゼンは見つめた。
「癒しの力などなくてもいい。素晴らしい力だということは分かってますが、あなたの本当の素晴らしさは癒しの力ではありません。あなたさえいて下さったら、僕はそれでいい」
「ち…からが……無くても……?」
震える声で問うた呂望に、楊ゼンはうなずく。
「癒しの力が無くても、あなたは変わらないでしょう? 傷ついている獣を見れば駆け寄って手当てをなさるでしょうし、病に苦しむ人には医者を呼んで、何とかして助けようとされるでしょう。
そういうあなただからこそ、天は癒しの力を授けられたのだと……僕はそう思いますよ」
真摯な言葉を紡ぐ青年を見上げた深い緑の瞳が、みるみるうちに潤んで、溢れ出した涙がすべやかな頬を伝い落ちる。
「──本当に……」
小さく唇を震わせながら、呟くように呂望は問いかける。
「本当に……いいのですか……?」
「僕は嘘は言いません」
ゆっくりと歩み寄った楊ゼンは、そっと手を上げて少女の頬を零れ落ちる涙を指先で優しく受け止める。
「伯爵家の名前も財産も、癒しの力も、何も関係ありません。『あなた』に生涯、傍にいて欲しいんです」
その言葉に呂望は目を閉じる。
いくつもの涙が月光にきらめきながら零れ落ち、細い肩が小さく震える。
───誰も言ってくれなかった。
誰もが、奇跡を起こす癒しの力を褒め称えるばかりで。
誰一人として、『呂望』のことは認めてくれなかった。
力を持っているのは、呂望自身だったのに、いつでも『呂望』は癒しの力の器でしかなかった。
誰か一人でいいから、ずっと言って欲しかった。
大切なのは、癒しの力ではなく『呂望』自身だと。
たった一人でいいから──できることなら、かつて軟弱だとそしられることも顧みず、狩りで獲物を傷つけないようにすると誓ってくれた少年に。
それが、今。
「姫君」
声を出さずに泣き続ける少女を、青年の優しい腕が壊れ物を抱くようにそっと抱き寄せる。
「あなただけを愛しています。僕の妻になって下さいますか?」
甘やかに響く低い声に、涙に濡れた瞳を見開いて。
「……はい」
青年の胸の中からゆっくりと顔を上げて、呂望はうなずく。
「はい、喜んで……」
泣きながら、けれど心からの微笑みを浮かべた少女に、楊ゼンもまた、筆舌に尽くしがたいほどの愛おしさをにじませた笑みを見せる。
「──ありがとうございます」
そして、片手を上げ、呂望の頬を伝う涙を優しくぬぐう。
が、零れ落ちる涙はなかなか止まらず、微苦笑した楊ゼンは、すっと身をかがめて少女のやわらかな頬に口接けた。
「───あ…」
不意打ちされて、驚いたように目をみはった呂望に微笑みかけ、そのまま頬を伝う涙を唇で受け止める。
その温かな感触に、いつしか涙も止まって。
至近距離で見交わした瞳に、呂望は恥じらうようにまなざしを伏せる。
そんな少女の頬にそっと触れながら、
「呂望」
甘く響く声で楊ゼンは初めて名を呼んだ。
自分の名前とは思えないほど甘やかなその響きに、うながされるようにして呂望はもう一度顔を上げる。
「────」
開け放たれた大きなガラス扉の向こう、大広間から宮廷楽団の奏でる美しい音色が聞こえる。
月の光に照らし出されたバルコニーで、見つめ合った瞳をゆっくりと閉じて。
二人は初めての口接けを交わした。
優しい温もりを感じあうだけのキスに、少女の華奢な身体が小さく震える。
そして、もう一度瞳を見交わし、優しい腕に引き寄せられるままに、呂望はそっと青年の胸に寄り添った。
触れ合った温もりが──伝わってくる想いが、もう一度泣きたいほどに幸せで。
胸を震わせる甘やかな想いを噛みしめるように、呂望は楊ゼンの腕の中で目を閉じた。
* *
華やかな舞踏会も終わりに近付き、貴族たちは互いに、次は美しい森と湖のある避暑地で会いましょうと挨拶を交わしながら、家路についてゆく。
「──え?」
その中で、呂望は元始伯爵家の馬車は既に王天君一人を乗せて帰ってしまったと侍従に聞かされて、大きな瞳をみはった。
「姫君は、通天公爵家の馬車に同乗なさってお戻りになるようにとの御言付けを預かっております」
「分かった。そういうことなら、うちの馬車を回してくれ」
うやうやしく頭を下げる侍従の言葉に、すぐさま指示を出してから、楊ゼンは苦笑しながら傍らの呂望にまなざしを向ける。
「どうやら彼には全部お見通しだったみたいですね」
「ええ……」
まだ呆然とした表情のまま、呂望はうなずいた。
「うちの馬車で、わしを置いて帰るなんて……」
本当にあれはエスコートなのか、そういえば、エスコートを頼まれた時もお祖父様秘蔵ワインと引き換えではなかったか、と憮然となる伯爵令嬢に、その婚約者となった青年は微笑する。
「お互い、彼には一本取られっぱなしのようですね」
そして、
「でも、このままでは悔しいと思われませんか?」
「──楊ゼン様?」
涼やかな美貌に、悪戯めいた表情を浮かべて傍らの少女を見つめた。
「せっかく馬車を御一緒することになったんですから、これから度重なる彼の好意への御礼を僕たち二人で考えるというのはいかがです?」
その魅惑的な提案に、呂望は一瞬目をみはり、それから花が開くような笑顔を浮かべた。
「ええ、是非」
大きく呂望がうなずいた時、通天公爵家の馬車が車止めに滑り込んでくる。
「お手をどうぞ、姫君」
「はい」
差し出された手のひらに、呂望は細い手を重ねる。
そして互いの瞳を見つめて微笑みを交わした二人は、うやうやしく開かれた馬車の扉へと大理石造りの階段を下りた。
* *
夏の始まりと同時に公表された通天公爵家子息と元始伯爵家令嬢の婚約は、王国でも有数の貴族同士の結びつきというだけでなく、両者が未婚の貴公子・令嬢の憧れの的だったことも手伝って、その夏の社交界の話題をひとりじめにした。
そして翌年、初夏。
王都で盛大に行われた結婚式には王家の人々までもが参列し、似合いの二人を祝福したという。
end.
というわけで、長々と続きました『銀曜日のおとぎばなし』完結です。
これは、4000HITを踏まれた苑名深智さまのリクエストで、
・パラレルで師叔が女の子
・王天君が楊ゼンと師叔を取り合い。
・できたら、師叔は普通の女の子ではなく、何か不思議な力を持っていると嬉しい。
というのが、その内容でした。
女の子師叔のファンタジーというのは、前々から書きたくて仕方がなかった代物なので、渡りに船とばかり、長い話をこさえてしまったのですが・・・。何とかリク内容はクリアできたでしょうか。
物語はこれで終わりますが、この後、楊ゼンと呂望の間には男の子と女の子が2人ずつ、計4人の子供が生まれます。
長女(顔立ちと性格は母親似・髪や瞳の色は父親似)は、幼い頃から何故か『王天君のおじ様』に異様に懐き、後継ぎのいない侯爵家に養女に入ることになったのですが、本人が「おじ様のお嫁さんになるの!!」と言って聞かず、17歳の時、王天君本人と父親が渋るのを押し切って嫁いでしまいます(年齢差23歳・笑) そんなわけで結局、王天君は一生姫君のお守りから逃れられませんでした(笑)
長男(楊ゼンのミニチュア)は、国務大臣となった父親の後を継いで、公爵となります。
次男(呂望の男の子版ミニチュア)は、元始伯爵家へ養子に入り、老伯爵の遺産と爵位を継ぎます。
そして、唯一呂望の癒しの力を受け継いだ次女(顔立ちは父親似・髪や瞳の色は母親似。但し性格はおっとりタイプ)は、14歳の時に、なんと園遊会で王子(12歳・現国王の孫)に一目惚れされ、「おまえを僕のお妃にする!!」と宣言されてしまいます。そして5年後、本当に王太子妃となり、ゆくゆくは国民に慕われる心優しい王妃として世継の王子を産みます。
そして、肝心の公爵夫妻はいくつになっても若々しく、人々が羨むような熱愛ぶりで生涯、添い遂げるのです。
というわけで、おとぎばなしらしく、この物語を締めくくりたいと思います。
最後までお付き合い下さってありがとうございました。m(_ _)m
「そして、みんな幸せに暮らしました。めでたしめでたし。」
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