Chanson de l'adieu 6
「───あ・・っ!」
セレストの指が、くちゅりと水音を立てて最奥の一点を刺激した途端、カナンは高い声を上げて昇りつめる。
大きく背筋をのけぞらせ、びくびくと躰を震わせたカナンが少し落ち着くのを待って、セレストは宥めるようにカナンの顔に口接けを幾つも落とし、そしてまた、挿し入れたままだった指をゆっくりと動かそうとする。
が、それをカナンの声が止めた。
「ちょっ・・・と、待て・・・・」
「カナン様?」
「いいから・・・・。ちょっと離せ」
「──?」
カナンの意図が分からず、少し戸惑いながらもセレストは言われた通りに指を抜く。
不必要な刺激を与えないよう気を使ったつもりだったが、それでも異物の失せる感覚にカナンは、びくりと肩を震わせて、大きく息をついた。
「どうかなさって・・・・お辛かったですか?」
「いや・・・・。そういうことじゃなくて・・・」
呼吸を整えるように一つ深く息をして、カナンはシーツに肘を突き、少しだけ躰を起こす。
そして、セレストに口接けた。
軽く触れるだけで離れて、情欲に染まった躰を持て余すように目をしばたたかせながら、セレストを見つめる。
「──そろそろ、お前が辛いだろう?」
「え?」
「始めてから随分経つし・・・・まだ、時間がかかるのは僕にも分かるし・・・・」
言いにくそうに言葉を選びながらも、カナンの青い瞳はまっすぐにセレストを見上げていた。
「だから・・・・・」
言葉と共に、まだ着たままだった服の上からカナンの手がセレスト自身に触れて。
思いがけない展開に、セレストは一瞬、心臓が止まりそうなほどに驚く。
「カ、カナン様!?」
「いいから。・・・・僕だって、お前に触れたいんだ」
「ですが、それは・・・・!」
「こんなにしてるくせに、あれこれ言うな。お前ばかり我慢させて楽しいわけがないだろう」
「楽しいって・・・・!?」
動転したセレストが止める間もなく、カナンは器用に指を動かして前ボタンを外し、セレスト自身に直に触れる。
「──!!」
冷たくはない、だが比較すれば随分と温度の低い指先の感触に、思わずぞくりとしたものが背筋を駆け抜け、思わず息を呑む。
そんなセレストをちらりと見上げて、カナンはまなざしを伏せ、ゆっくりと全体の形を指でなぞり始め、ゆるゆると与えられる愛撫に、たちどころに熱が上昇するのを感じて、セレストは慌てた。
「カナン様・・・・っ」
「様なんて呼ぶな」
意義を聞く気などまったくない様子で、カナンは少しずつ愛撫を強めてゆき、そして、自分も煽られるものがあるのか切なげに一つ息をついてから、濡れ始めた先端に口接けを落とした。
「カナン様、それはっ」
「いいから、黙ってろ」
「ですが・・・・っ」
思わずカナンの肩を掴んで引き離そうとした手は、ちゅ・・・と強めに先端を吸い上げられて止まる。
確かに、同性相手の経験などあるはずもないカナンの躰に、セレストを受け入れられるだけの準備を施すのには時間がかかっており、先程、ようやく指一本の感覚に馴染んだところで、今しばらくの愛戯が必要なことはお互いに承知している。
そして、一度熱を解放したカナンと違い、セレストの方はカナンの乱れた姿に煽られるだけ煽られている状態なのも、また事実だった。
だが、セレストとて、ろくに経験もないような少年とは異なり、それなりに自分をコントロールするすべもわきまえており、まだしばらくは余裕を持って自分を抑えることはできたのだ。
なのに、妙なところで気が回る上に気の強い恋人は、聞く耳も持ってくれずにセレストの欲望を導こうとしている。
そんなことをさせるつもりなどなかったセレストとしては、大いに動転したまま、しかし力尽くで抵抗するわけにもいかず、ただ途方に暮れて身体の中心で微妙に揺れている金の髪を見つめた。
「──っ・・・は・・・」
セレストの内心などお構いなしに、熱を帯びた息をつきながら、カナンは丁寧にセレストを愛撫し続ける。
優しく舌で刺激し、唇で甘噛みしながら口に含みきれない根元には指を這わせ、くまなく嬲る。
これまでこんな真似をしたことなどあるはずがなかったが、同性の感じるところなどおおよその見当がつくのだろう、技巧に長けてはいなくとも、触れる箇所はいずれも的確だった。
「あまり無理は・・・・」
そっと声をかけながら、セレストはカナンの髪に手を伸ばし、ゆっくりと梳く。
不慣れではあるが、けなげと言ってもいいほど丁寧に施される愛撫を受けているうちに、かえって少しずつ心が落ち着いてくる。
別にカナンは、セレストを困らせようとしてこんな真似をしているわけではない。
ただ、セレストがカナンを求めるように、カナンもまたセレストを求め、一方的に愛されるのを嫌がっている。それだけのことなのだ。
そう気づいた時に、セレストの中で抵抗する気は失せた。
こんなことまでしなくても、という思いは消えないが、それでも肩の力を抜き、拙い愛撫を受け止める。
半ば強引に始められた行為であっても、気持ち良いものは気持ち良い。
ましてや、相手はカナンなのだ。
最初から抗えるはずなどなかったと思いながら、気を紛らわせるようにさらさらと流れる金の髪を梳き、ついでの戯れに細い首筋にも軽く指を這わせる。
と、びくりとカナンの背中が震え、報復するように強く舌を絡められて、思わずセレストは苦笑を零しかけた。
だが、互いに余裕があったのはそこまでで。
「・・・・っ、そろそろ・・・」
もともと口での行為は扇情的なものだが、それが愛しい相手によってなされるものであれば、熱の上昇度合いは倍増する。
いつになく早い熱の昂ぶりを感じて、セレストはカナンに愛撫の終了を促す。
が、
「──っ! カナン様!?」
不意に先端に軽く歯を立てられて、セレストは慌てた。
「・・・・様なんて呼ぶな、馬鹿」
息継ぎの合間にそう言い捨てて、熱を帯びた瞳でセレストを睨み上げたカナンは、再び顔を伏せて、いっそう愛撫を強める。
全体を口腔に含まれ、過敏な裏筋に沿わせるように舌を使われて、抑え切れないところまで熱が膨れ上がり、それを感じ取ったのだろう、カナンはこれまでになく強くセレストの欲望を吸い上げた。
「カナ、───・・・っ!!」
甘い電流のような痺れが背筋を駆け抜けて、こらえることもできずにセレストは昂ぶりを解放していた。
迸る欲望を全て受け止めてから、カナンはゆっくりと唇を離し、小さく咳き込む。
その細い喉が、口の中のものを嚥下しようと動くのを見て、セレストは何ともいえない気分に駆られた。
「・・・・・本当に、あなたは無茶ばかり・・・・・」
細い顎に手をかけてこちらを向かせ、濡れた口元を指で拭う。
そして、肩で息をしながらこちらを見上げる青い瞳を見つめ、言うべき言葉が見つけられないまま、カナンを胸に抱きしめた。
「・・・・僕だって、お前が好きなんだからな」
「分かっておりますよ」
ああもう、と溜息をつきながらセレストは、抱きしめる腕の力を強くする。
どうしてくれようかという気分は、ずっと昔、カナンの悪戯に手を焼かされていた頃にも似ていて、確かに大人にはなったけれど本質のところは何も変わってはいないらしい、と今更ながらに実感させられる。
だが、カナンの方はそんなセレストの感慨になど頓着する気はないようだった。
「何を溜息なんかつくんだ」
「つかずにいられますか」
「良くなかったか?」
「そういうわけでは・・・・・」
また零れそうになる溜息を押し殺しながら、セレストは腕を緩めてカナンの顔を上げさせ、口接けた。
「──まさか、あなたがこんなことをされるとは思いもしなかったので。少し驚いただけです」
「嫌だったわけじゃないんだな?」
「それはまあ・・・・・」
「ならいい」
セレストの腕の中で小さく笑って、カナンはセレストの肩に腕を回し、唇を重ねる。
触れるだけで離れ、それからじっと見上げてくる青い瞳に、誘いかける色を確かに読み取って、セレストは苦笑しながらもそれに応えた。
深く口接けながら、抱きしめていた手を細腰の窪みへと這わせる。
途端、びくりと熱を帯びたままのカナンの躰が反応した。
「・・・っ・・・・あ、っん・・・」
そのまま指先で過敏な背筋をたどり続け、耐え切れないようにカナンの肩が小さく震え出すのを見計らって、ゆっくりとシーツに押し倒す。
そして、宥めるように白い肌のあちこちに口接けながら、驚かせないようにそっと最奥へと指を滑らせた。
「・・・ぁ・・・・セレスト・・・」
「大丈夫ですから・・・・」
セレストへの愛撫を施すことで自身も昂ぶったカナンの熱は、既に甘く濡れ始めている。
伝い落ちた雫を指先に掬い取るようにしながら、秘処にやわらかな刺激を与えて、きついそこを解けさせてゆく。
決して急ぐことのない優しい指戯に、ほどなくカナンの躰は応え始めて、十分なぬめりを利用してセレストの指がゆっくりと内部へと滑り込んだ。
「・・・・は・・・、・・・あっ・・・」
「カナン様・・・・」
痛みはないようだったが慣れない感触に違和感を覚えるのか、カナンがかすかに眉をひそめる。
だが、やめろとは言わずに、キスをねだり、セレストもそれに応えた。
深く口接けながら、連動させるようにゆっくりと指を蠢かせ、柔襞がその感触に馴染んだところで指を増やす。
決して強引ではないが、きつい箇所を拓かれる感覚に、カナンが小さな声を上げた。
「痛みますか・・・?」
「──大、丈夫だ・・・・すぐ・・・慣れる・・・・」
知らず浅くなった息を、どうにか深く継ごうとしながら、切れ切れにカナンは答え、セレストを見上げる。
苦痛と情欲がないまぜになって揺れる、濡れて透明度の増した青い瞳を見つめながら、セレストは言い知れぬ熱と愛しさが込み上げるのを感じた。
一息に貫いてしまいたい衝動を抑え、カナンが落ち着くのを待ってから、ゆっくりと指での愛撫を再開する。
過度の刺激にならないよう気をつけながら、熱くおののいている柔襞をそっと探るようにたどり、感覚を馴染ませてゆく。
同時に、胸元へも口接けを落として、最奥に集中しがちなカナンの感覚を散らし、宥める。
そうするうちに、未知の感覚にこわばっていた躰から少しずつ余計な緊張が抜けてゆき、最奥が指の動きに合わせて、くちゅりと小さな音を立て始める。
「──あ・・・!」
そして、セレストの指先が過敏な一点に触れた途端、カナンは高い声を上げて、小さく背筋をのけぞらせた。
「ここ・・・、気持ちいいですか?」
無防備にさらされた細い首筋に口接けを落としながら、ゆるゆると指先で抑えるように、そこを刺激する。
と、その曖昧で中途半端な愛撫に焦れて、柔襞がひくり・・・と反応を始めて。
狭い箇所が堅さを失い、セレストの指にためらいがちに絡みついてくる。
それでも、ゆるやか過ぎる愛撫を止めずにいると、たまりかねたようにカナンが甘くかすれた声で名を呼んだ。
「セ・・・レスト・・・・・っ」
「はい」
少し意地が悪いかと思いながらも、あえぐ唇にキスをし、その合間に更に指を増やす。
さすがにきつかったが、与えられる感覚に馴染み、蕩けつつあるそこは、少しずつ三本の指を飲み込んでゆく。
押し開かれる感覚におののく柔襞の感触を測りながら、セレストは決して急がなかった。
十分過ぎるほどに時間をかけ、そしてまたカナンが感覚に慣れるまで動きを止めて待つ。
カナンもこわばる躰の力をどうにか抜こうと、震える吐息で深呼吸し、すがるものを求めるようにセレストへと手を伸ばして、唇を重ねる。
そしてまた、幾許かの時が過ぎて。
「あ・・・セレスト・・・」
「──そろそろ大丈夫ですか?」
「ん・・・・」
カナンの呼吸が落ち着きを取り戻したところで、セレストはゆっくりと指を動かし始める。
三本の指を飲み込まされたそこは、ひどくきつかったが、苦痛を感じさせないように気をつけつつ、また過敏な箇所を探り当てる。
指先が快楽の原点ともいえるそこに触れた途端、カナンは切なげに眉をひそめて、びくりと躰を震わせた。
「・・・・っは・・・ぁ・・・っ・・」
何度も繰り返し優しく刺激してやるうちに、カナンは苦痛だけではない吐息を切なげに乱して、快楽を導こうとする指の動きに耐えようとするかのようにシーツをきつく握り締める。
その浅く喘いでいる胸元にセレストが口接けを落とし、甘く色づいてしこっている果実に軽く歯を立てると、柔襞がひくりとおののいて、拒絶とも誘いともつかない熱さで指を食い締めた。
その反応を手がかりとするように、セレストはカナンの胸元を舌と指で優しく弄りながら、挿入した指をゆっくりと抜き差し始める。
ごく浅いその動きに焦れたように柔襞が震えれば、また少し動きを大きくする。焦れったいほどに丁寧に施される愛撫に、たまりかねたように細い腰が震えた。
「──ふ・・・ぁ・・あっ・・・、ん・・・っ・・」
途切れることのない戯れるような胸元への指と唇の愛撫と、ゆるゆると、やわらかな内壁を優しくなぞるように動く指先がもたらす感覚を持て余して、カナンが緩くかぶりを振る。
金の髪が触れるさやかな音に重なり、また溢れ出した蜜に濡れた指がゆるやかに抜き差しされるたびに、小さな音が響いていて。
その音に煽られるように、ただでさえ熱かったカナンの躰が更に熱を帯び、焦れた華奢な爪先がシーツの上を滑るのを、セレストは視界の端に見とめる。
「あ・・・もう・・・っ・・!」
「我慢できませんか・・・・?」
先程からずっと、セレストはカナンの中心には触れてはいなかった。
別に意地悪をしているつもりはなく、ぎりぎりまで感覚を高めて、少しでも一つになる時の苦痛を減らしてやりたいからなのだが、惜しみなく全身に与えられる愛戯に反応した快楽の徴は、決定打のない緩やか過ぎる最奥への刺激だけでは熱を解放することができず、切なげに蜜を溢れさせておののいている。
そろそろ限界だろうかと測りながら、胸元に軽く歯を立てつつ挿入した指を優しく動かすと、悲鳴のように切羽詰った嬌声がカナンの唇から零れた。
「──やああっ、セレスト・・・っ!」
煽られるだけ煽られ、切なくてたまらないのだろう。どうにかして快楽を得ようと細い腰が揺れ、柔襞が挿入されたままの指を締め付ける。
そんなカナンの様子を確かめ、セレストはゆっくりと指を抜いた。
「あ、や・・・セレスト・・・っ」
「大丈夫ですから。力を抜いて・・・?」
高められるだけ高められた、この中途半端な状態で置き去りにされる不安を感じたのか、きつく閉じていた目を見開いて、カナンがセレストを求める。
その泣き濡れた青い瞳を真っ直ぐに見つめ、セレストは宥めるように汗に濡れた金の髪を優しく撫で、キスを落とした。
そして、自分の熱をカナンの最奥に押し当てる。
指とは全く違うその熱さにカナンは、びくりと慄え、けれどすぐに、こわばる躰から力を抜こうと深く息をしながらセレストを見上げ、小さく頷いた。
「いいから・・・早く・・・・」
自分を求めるかすれた声が、ひどくいじらしく感じられて。
セレストは優しく微笑み、カナンの唇に口接ける。
「愛してます」
そして、深く舌を絡めながら、ゆっくりと腰に力を込めた。
「──っ、ん・・・っ」
ぎりぎりまで感覚を高められ、十分過ぎるほどの愛撫を施された秘所は、ひくつきながらも少しずつセレストの熱を受け入れてゆく。
ただ、きつくて、熱くて。
灼熱の楔に押し開かれる圧迫感と、つい今まで優しい愛戯にさらされていた内壁が何かを求める切ない感覚の相克に耐え切れず、カナンが切れ切れの声を上げる。
「──全部、入りましたよ」
「・・・・あ・・・・」
逸る気分を抑え、カナンの呼吸を計りながら、できる限りゆっくりと身体を進めたセレストは、己の熱が根元まで柔襞の中に飲み込まれたのを感じて、あえぐカナンの耳元にそっとささやいた。
その声に、カナンはうっすらと目を開け、少し苦しげに眉をしかめたまま二三度まばたきして、セレストを見上げる。
「お辛くはありませんか・・・?」
「ん・・・平気だ・・・・。それより・・・・すごく、熱い・・・・」
僕の中にお前がいる、と熱に浮かされたような声で囁かれて。
「──カナン様・・・」
込み上げた熱と愛しさに、セレストはそっとカナンと額を合わせ、何度もついばむような口接けを落とす。
目を閉じて、それを受け止めていたカナンが、キスの合間に、ふと囁いた。
「・・・何か・・・・」
「どうしました?」
「何か・・・・変な感じが・・・する。苦しいんだけど・・・・それだけじゃなくて・・・・」
熱を帯びた甘い声でそう言い、カナンはセレストを見上げる。
吸い込まれそうな艶を帯びた青い瞳に、セレストは思わず背筋がぞくりとするのを感じた。
「・・・・お前が、もっと欲しい」
そして、告げられた言葉に。
これまで抑えていた何かが弾け跳ぶ。
「カナン様・・・!」
込み上げる想いに流されるまま、カナンに口接け、深く舌を絡め取りながら、セレストはゆっくりと動き始める。
経験のない躰を傷つけないよう、感覚を馴染ませるように小刻みに動きながら最奥の過敏な箇所を刺激し、柔襞が指に感じていた快楽を思い出すのを待つ。
ほどなく、苦痛をこらえるようだったカナンが、途切れ途切れに甘い響きを零すようになり、きつい内壁がためらいがちに絡み付いてくるのを感じて、セレストは動きを深めた。
「──あ・・ッ、ぁ・・ん・・・っ」
最初のうちは、苦痛と快感がないまぜになった感覚に戸惑っていたカナンも、やがて甘やかな熱に意識を溶け込ませ、セレストが与えるままに受け止め、応え始める。
激しくなりすぎないよう気遣いながらも、何度も深く突き立てられる熱に背筋をのけぞらせ、強弱をつけた動きに翻弄されるまま、カナンは甘やかなすすり泣きを零して。
深く交わり、擦れ合う箇所から生まれる言葉にならない甘さに、すがるものを求めてセレストの背に手を伸ばす。
感じている快楽の深さを訴えるように、きつく爪を立てられて、その痛みにセレストは微苦笑し、喘ぐカナンの唇に優しく口接けた。
「カナン様・・・・」
きつく閉じられた目尻から零れ落ちてゆく涙を唇で受け止め、快楽におののいている細い躰を強く抱きしめる。
初めて知ったカナンの躰は、これまでに抱いた誰よりも熱く、そして、ただ一途にセレストを求めてくる。
自分を呼び続ける声も、甘やかな泣き顔も、カナンの全てがどうしようもなく愛しくて。
どれほど抱きしめても、口接けても、まだ足りなかった。
込み上げる熱のまま求めれば、華奢な躰は初めて知る快楽におののきながらも応え、繋がり合った箇所からは淫らがましい音が動きに合わせて零れる。
けれど、その音さえもカナンが自分を受け入れている証のように思えて、止めようもなく熱は上昇してゆく。
「あ・・・ゃ・・・・セレスト・・っ、もう・・・!」
やがて、細くしゃくりあげるような声で名を呼んだカナンが、すがるように泣き濡れた瞳でセレストを見上げた。
熱くとろけた柔襞は、限界を訴えるようにひくひくとおののきながらセレストの熱に絡み付き、甘く締めつけてきていて。
セレストも、腰の奥でわだかまっていた熱が急速にせり上がるのを感じる。
「・・・っ、カナン様、一緒に・・・・・」
「や・・・あ・・・、早く・・・っ・・・!」
悲鳴のようにかすれた甘い声で泣きながら、最奥までを突き上げるセレストの動きに、カナンは細い首をのけぞらせ、細い顎が震える。
そのままもう焦らすことなく、セレストはカナンを最後まで導いてゆく。
やわらかな内壁の一番過敏な箇所を強めに数度、擦り立てると、びくびくと柔襞が大きく痙攣して。
「────っ・・・!!」
声にならない声を上げて、カナンは昇りつめた。
その絞り上げるようなきつい収縮を受けて、セレストもまた、想いの丈をカナンの裡に吐き出す。
「・・・・っ・・・・あ・・・・」
セレストの熱を余すところなく受け止め、カナンの躰が白い花が崩れるように力を失ってシーツに沈む。
指先まで痺れるような深い余韻におののきながら、うっすらと開いたカナンの瞳がセレストを求めて彷徨い、すぐに気付いたセレストは青い瞳を覗き込んで、力なく投げ出された細い手に自分の手のひらを重ねた。
「セレスト・・・・」
「はい」
どちらもまだ呼吸を乱したまま、それでも離れがたく何度もキスを繰り返す。
そしてまた、セレストはカナンの深く澄んだ瞳を見つめた。
けれど、どちらもそれ以上の言葉を見つけることはできず。
ただ腕を伸ばして、汗に濡れて熱を帯びたままの躰を抱きしめる。
どうしようもなく愛しくて。
今はただ、離れたくなかった。
to be continued...
久しぶりに、まともな濡れ場を書いたら加減の仕方を忘れてました。
短くしようという気持ちはあったはずなのですが、どこも削れずに何故かフルコースに。
その割には色っぽい雰囲気にならなくて、「む〜?」という感じなんですけど。毎晩、眠いのを押して書いていたのが敗因でしょうか?
イマイチ気に入らないので、このページだけ、そのうちこそっと手直しするかもしれません。
しかし、これだけ書いてると、さすがに飽きてきますな〜。
初回はとにかく手間がかかるし・・・・。人様のを読む時には、それがモエなんですけど、自分の文章じゃねえ・・・・(-_-;)
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